
工 素子(たくみ もとこ):
ミラノにてプロダクト・インテリアデザイナーに師事。イタリアデザインのみならず衣食住についても勉強中!

河合 妙子(かわい たえこ):
フォトグラファー&ライター。西・仏・英・中の4ヶ国語OK!トレドを拠点に、スペインの情報を発信します。
こんにちは、トレドの河合妙子です。
突然ですが、みなさんは運命を信じますか?
運命とは、生まれる前から決められているものなのか、「これが好き!」というものを追求した結果、
手にした職業や特別な人間関係について「これが自分の運命だ!」と納得するための言葉なのか…。
私にはよくわかりませんが、初めてレナタさんのパティオを見たとき、
私の身体がゾクゾクッとし、「これだ!」と直感しました。
そして、その後の彼女との出会いにつながったのは、本当のことです。

私が最初にこのパティオを目にしたのは、スペインに来て間もない2003年頃のこと。
フランスのテレビ局「ARTE局」とスペインのテレビ局「TVE局」が合作した、
『最後のセファルディ』というドキュメンタリー番組がきっかけでした。

“イベリア半島のユダヤ人”を意味するセファルディは、トレドにも多く住んでいましたが、
1492年に出されたユダヤ人追放令により、ギリシャやトルコまで逃げ出しました。
彼らの子孫たちは、今でもスペイン語(ラディーノ語)を話しています。
番組は、トルコに住むセファルディの青年が、先祖の住んでいた家を探すためにトレドにやって来るという内容で、
冒頭でレナタさんのお宅が紹介されたのです。

マドリードに近く石畳が美しい町だったという理由で選んだトレドに、
こんなに美しいパティオがあるのだと知って、私は興奮しきり。
当時、スペイン語はわからず友人さえいなかったものの、
「さあ、どうやったら彼女と出会えるのだろうか」と考えました。
そのうち聖体祭の季節となり、パティオ・コンクールがあることを知らされました。
花や泉、アラブの骨董タイル、アラビックやヘブライ文字が刻まれた年代物の漆喰の壁など、
それまで想像したことのなかった「中庭」に、私の目はくぎ付けに…。
写真を撮りまくり、ホームページを作り、知り合いの編集者さんにお送りすると、
「ぜひ、トレドのおうちを取材してください」と、トレドに来て最初の仕事をいただきました。

仕事が始まって2年あまり。
はからずもレナタさんの友人と出会い、彼女の家に遊びに行くことになったのです。

ドイツ人写真家であるレナタさんの、トレドでの出発点もまた、パティオの写真を撮ることだったそうです。
庶民の生活感が漂う今にも朽ちそうなパティオや、改修前の教会など、
当時は放置されていたトレドの風景を、彼女は撮り続けました。

かつて屋敷だった物件は、今でこそ人気があり値段も高いのですが、
その頃は安く、骨董タイルやフレスコ画、壁の装飾やムデハル様式(スペイン風アラブ様式)の飾りを取り去り、
現代風にリノベーションする人もいました。
彼女はそういう風潮に対して怒りを感じ、「この15世紀の館がそうなってしまう前に守りたい」と現在の家を購入。
フレスコ画もタイルもそのままに、最低限の手しか入れずに家族と生活を始めたのです。

そして現在は、教会や修道院の奥の間に残されている一般公開されていない芸術品を、
せめて写真で記録するという活動を続けています。
また、大の猫好きである彼女は、捨て猫や野良猫たちに餌を与えるというライフワークも続けています。
自宅には、そのきっかけとなった猫のピラも住んでいるんですよ。
次回も引き続き、レナタさんのお宅をご紹介していきます。
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