
工 素子(たくみ もとこ):
ミラノにてプロダクト・インテリアデザイナーに師事。イタリアデザインのみならず衣食住についても勉強中!

河合 妙子(かわい たえこ):
フォトグラファー&ライター。西・仏・英・中の4ヶ国語OK!トレドを拠点に、スペインの情報を発信します。
新年、明けましておめでとうございます。
今年も、トレドを中心に建築にまつわる楽しい話題をお伝えしてまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。
今日は、トレドに存在した「西ゴート王国」(6世紀後半~711年)の芸術品を収めるコンシリオス美術館を
ご紹介します。
「西ゴート王国」は、東ゲルマン人の一派・西ゴート族がトレドに築いた国で、ちょうど日本の飛鳥時代から
平城京遷都の頃にあたります。彼らはスカンジナビア半島を南下し、3世紀頃には黒海に定着、5世紀には
フランスで国家を作りましたが、最終的にこの地に辿り着きました。
コンシリオス美術館は、古代ローマ時代に起源をもつサン・ロマン教会内部にあります。
ここは、西ゴート(6~8世紀)、イスラム(8~15世紀)、ビザンチンの影響を持つロマネスク(11~12世紀)、
カトリック(15世紀以降)の芸術が混在し、不思議なハーモニーを醸し出している美しい空間です。
大小9か所の祈りの空間は、柱も壁全体もいろいろな時代のフレスコ画で埋めつくされています。
(写真・西ゴート王国時代の王冠。)
スカンジナビア発祥の西ゴート族は、赤毛で体格の大きいバイキングのような容貌をしていたようです。
トレドは、それまで古代ローマ帝国の属州都市だったので、文化も街も民族も、大きく様変わりをしたことが
想像できます。
(写真・西ゴート様式の特徴的な柱頭。)
西ゴート族は人像表現を禁じ、星やらせんなど抽象画を用いました。これら植物文様の柱頭は、
トレドのいくつかのパティオにも残されています。
(写真・思わず欲しくなる、ベルトのバックルの数々。)
西ゴート族は、ベルトのバックルのデザインに凝っていたようです。大きな毛皮のマントをギュッと
締めるには、高い機能性が必要だったことでしょうし、見た目にもかっこいいものがよいという
人間の感性は、古今東西、変わらぬものなのですね。
内部を支える馬蹄形アーチもまた、西ゴート建築の特徴であり、後のイスラム文化に受け継がれました。
しかし、アーチの内側に描かれた2体の人物像は、ビザンチン風のカトリックの僧侶です。
蘇生した死者が棺桶のふたを一斉に開けているところを描いたシュールなフレスコ画。
天上で舞う天使はさながら指揮者のようです。人々の顔がどことなくアジア風なのは、ビザンチン文化の影響?
高いところにある飾り窓に描かれた天使の絵も、ビザンチン風。
これはイスラム教の芸術。花びら型に囲まれた馬蹄形アーチの窓も、その周りを囲む文字も、
一目でそれとわかります。
こちらは、中央礼拝堂にあたるカトリックの祭壇画と精巧な丸天井。16世紀にトレドの教会建築を広く手掛けた
天才建築家、アロンソ・デ・コバルビアス作です。土地の有力者の家紋もそれを持つ男性像も、
その頃のものであることは一目瞭然ですね。
西ゴート王国が滅亡したのは、ロドリゴ王がイスラム軍の水先案内人だった娘と恋に落ちたからだと
言われています。711年から、トレドはイスラム期に入りました。
トレドにいらしたら、ぜひ、スペインの歴史が芸術の中に凝縮されているこの不思議な美術館を
訪れてみてください。トレド全景が見渡せるアラブ時代の塔にも登ることができます。
そして、街の至る所にある西ゴート時代のデザインを、発見してくださいね!
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