
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
Q:夫婦共有名義マンションのローンの借換えを検討しています。現在は夫名義の金融公庫6割、妻名義の年金福祉4割となっていますが、夫名義で一括して金融機関で借り替えるつもりです。権利書の名義は変更せずに行いたいのですが、その場合贈与税や所得税はどうなるのでしょうか?現在のマンション時価はローン残高より低いようです。
A:実際には妻の収入の有無、貯蓄額、残債の額など個々の具体的な状況によって違いますので、ここでは考え方を示しておきます。心配な場合は、最寄りの税務署に具体的に相談するか、または国税局の税務相談をご利用ください。
●当初購入時の状況把握
現在の名義の持分の考え方を整理しておきましょう。仮に共有名義の持分を夫と妻それぞれ50%とします。拠出した金額に応じた持分設定でなくてはなりません。従ってローンの比率は夫60%、妻40%ですので、ローンの差額20%分に相当する金額は妻が自己資金として余分に拠出したはずと考えます。
●借換え時の状況
夫が銀行から新たにローンを借入れて、妻のローンを一括返済した場合は、理屈的には妻のローン残債同額の金銭を妻へ贈与したことになります。従って、残債に見合った贈与税が掛かります(基礎控除110万)。この時に建物の時価は関係ありません。仮に建物が何らかの理由で消失しても、それぞれの負債としてローンは残ります。このケースは贈与税に関するケースで所得税はまずありえないと思います。
手続き上は資金の出所はどうあれ、妻の負債は一旦妻名義で返済する形になります。資金の大半は夫が新規に借り替えるローンの場合、現実にこれを税務署が問題にするかどうかは、難しいところです。金額やその時に「妻が働いている」、「専業主婦となった」などの状況にもよりますが、贈与税の税率は高いので、贈与ととられないような配慮も必要でしょう。
●借換え時の手続き
妻のローンの一括返済資金は次のようなケースが考えられます。
(1)返済資金は妻の預貯金を充当する。これであれば全く問題はありません。
(2)妻が親・夫などから借入して支払い(きちんと贈与でないことを証明する書類を作成)、その後親・夫へ返済していく。この場合は妻の返済能力が必要です。
(3)妻が親から相続時精算制度を利用して贈与を受ける。相続時に精算しますので、当面贈与税は掛かりません。但し、この制度を一旦利用すると、通常の贈与税の基礎控除110万円の適用は受けられなくなります。親の資産状況によっては、相続時の相続税上不利となります。相続時精算制度の適用には詳細な条件がありますので、利用可能かどうか、利用が得策かどうか、事前に充分検討ください。
●夫婦間の贈与について
贈与は毎年110万円までは贈与税の基礎控除内ですので、その範囲であれば税金はかかりません。夫婦間も同様です。ただし、「毎年110万円贈与する」と約束した場合は、その時点で全体の金額を受取る権利の贈与を受けたとみなされますので注意ください。
※参考 今回のようなローンの肩代わりには使えませんが、マイホームの贈与または取得資金の贈与については、20年以上連れ添った夫婦であれば、特例で2000万円+基礎控除110万円まで無税です。但しこの特例は生涯に1度だけですので注意ください。
夫婦といえども財産は拠出した額に見合うように配分すべきで、それが一番の節税です。最近は高額所得の女性も少なくありません。仮に夫と同額の収入があって、家事は妻がより多く負担しているのであれば、毎年の貯蓄額は妻のほうが多くて当然です。今回のケースは、妻の預貯金が不足する場合は、正式に親などから借金をして、何らかの収入を得てきちんと返済していくのが順当ではないかと思います。

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