
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
「住まいの動線」というと、今までは主に家事動線を中心として論じられてきました。炊事と後片付け、洗濯、掃除と、朝の時間は特に、主婦は大忙しとなります。毎日のことなので、省力化は不可欠です。
ここでは少し考えを進めてみて、「動線」という言葉でさらにどのような間取りのあり方や生活のシーンが見えてくるか考えてみましょう。
●省力化と動線
冒頭にあるように、キッチンと洗濯や家事のスペースを集中させることは、動線上も建築費の面からも基本中の基本で、ほとんどの間取りはそのようになっています。
その他にも、動線は生活のあらゆる部分にかかわります。社会や暮らしの変化でも、動線のあり方が変化していく事も忘れてはなりません。
◇収納と動線の良し悪し
・手前のモノを取り出さないと奥のモノが取り出せない納戸
・重いもの、頻繁に使うものが上の方にある収納
・季節の入れ替えがスムーズにできない収納
・使うところにない収納(例:脱衣室に家族の下着収納がある方が、各室にあるより格段に便利)
◇コンセント
現代では畳の暮らしが少なくなりました。ベッドと椅子の暮らしが中心です。しかし、いまだ多くのコンセントの位置は床から20cmほどの位置のままです。ほとんどのコンセントは機能的にも、埃などを避ける意味でも、見た目の問題はありますが、テーブル上の位置にあった方が使いやすい状況です。
パソコンとその周辺機器のコードにいらいらした方も少なくないのではないでしょうか。きちっとした主婦は外出の時に、冷蔵庫などの特別なもの以外のコンセントを抜いて出かけるでしょう。かがんで奥のモノを引き抜くのは結構大変なものです。
●雰囲気作りと動線
それほど距離がない門から玄関までのアプローチでも、角度をつけてすぐに見えないよう工夫して、雰囲気を出したりします。茶事に置ける路地から茶室、さらに茶室内部の構成など、所作とともに動線でつづられているといってよいでしょう。動線は単に効率だけでなく、無駄や遠回りも合わせて豊かな暮らしを提供するキーワードなのです。
●暮らしのあり方
動線は、単に効率だけでなく、子どもの成長や安全に大きく関与します。いくつか例を挙げておきます。
◇子どもと動線
・子どもが学校から帰ってきて、親の目に触れずに子ども部屋に直行できない動線
・乳幼児の事故と動線の関(子どもが入ってはいけない場所、通らない場所の区分など)
◇2世帯住宅や多世代同居の暮らし
・親世帯とのコミュニケーションの促進と調節
在宅勤務やパソコンなど、事務機器の住まいへの進出で、家庭内に新たな危険が生じているのは、昨今のシュレッダーによる事故の報道からも分かります。安全にも直結しますので、想像力を働かせて今までの常識だけにとらわれずに、日々の所作を観察し、使いやすく安全な動線を考えてみてください。動線をヒントの一つにして、安全で楽しく快適な我が家流の間取りを編み出してみましょう。
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