
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
総集編も「共有名義」「住まいづくり」「ライフプランニング」に続く4回目となりました。今回のシリーズは、住まいの購入後の諸問題と、住まいや家計の管理についてです。
タイトルから見ると、購入された方向けのコラムに見えますが、むしろ住まいの性能や安心・安全は、住み手の住み方によって大きく差が出ること、快適に暮らすにはどのような注意が必要か、などを通じて、これから購入や建築をしようと考えている方に、新たな視点を提供したいと思います。
●健康に住むには
「シックハウス」という言葉は一般に定着しましたが、実は室内の空気を健全に保つには、有害物質を含まない材料の選択や換気設備などの他に、間取りや暮らし方も大きく影響します。
◇換気計画…
室内の換気の方式はいろいろあります。建物の気密性能が高まり、計画換気は住まいの性能を決める重要な要素となっています。ダクトを使用した大掛かりなものもありますが、一長一短です。
各居室の給気口から自然に取り入れた新鮮な空気を、反対側に取り付けた換気扇で誘導し排気する方法は、簡単でメンテナンスも楽です。給気口に花粉フィルターなどを併用すると、よりクリーンな空気を取り入れることが出来ます。
換気扇を取り付ける部屋はトイレやキッチン・浴室・廊下などです。下記の図のように、間取りの工夫で誘導します。特に収納や納戸の位置は、換気計画上、大切です。

◇日々の換気…
基本は建物の設計時の換気計画です。しかし、入浴後の浴室の換気、加湿器使用時の管理、結露の管理など、日々の生活の中における換気や湿度の調整も、健康の維持や建物の寿命に影響します。
※ある団地の事例…5階建ての公団タイプの分譲マンション(階段を挟んで両側に住戸があるスタイル)では、全ての住戸が全く同じ間取りですが、暮らしの聞き取り調査の結果、上記のような日々の管理をきちんと行っている家庭とそうでない場合では、カビの状況や内装材の劣化の状況が全く違うという事実が見られます。当然健康にも大きく影響するでしょう。
◇衣類の管理…
上記の図で、衣類の管理に防虫剤を使う場合を考えてみてください。揮発性物質が居室に流入しないようにするには、収納の空気を廊下や外気、トイレなどに誘導する工夫が必要です。
また、日頃の虫干し管理、密閉プラスチックケース(衣類は充分に虫干しや洗濯などをしてある前提)の利用、収納の内装を青森ヒバやヒノキなどで仕上げて防虫剤を使わない工夫、樟脳などの自然素材の防虫剤にするなど、日頃の管理によっても大きな違いが生じます。
◇モノの管理…
モノがあふれると掃除が行き届かず、埃が溜まり不衛生になります。モノを増やさない工夫も、健康に住む重要なポイントです。モノがあふれた生活はストレスの蓄積にもつながります。
「大人のアトピーはベッドと机だけの簡素な部屋に寝起きすると直る」といわれるほどです。いかにモノがあふれない間取りにするか、何を新居に持っていくか…今の暮らしから、新しい住まいのあり方も探れます。
◇家具とファブリック…
新築には、新しい家具やクッションなどが欲しいものです。内装材などは健康に配慮したものを選定しても、家具やカーテン・クッションなどは、健康に特化した特殊なメーカーがつくっているだけで、健康に配慮したものはあまり多くありません。
内装材の製造工程で、有害物質を排除または少なくした製品をつくることは、さほど難しくはありません。問題は保管方法で、通常の製品と同じ倉庫の部屋で保管すると、性能の低い方に移行してしまいます。つまり、本当は中に入れる家具などの吟味も大切なポイントなのです。
◇日用品と有害物質…
衣類の管理以外にも、芳香剤・洗剤・ワックスなどの使用は成分に気をつける必要があります。日々の生活を見渡すと、われわれは多くの化学物質を使っています。
※参考…「食品と暮らしの安全(日本子孫基金)」が発行しているポスター「住まいにひそむ毒性物質」(250円)に有害度のランクが表示されています。
「健康に暮らす」ことだけを考えても、間取りの工夫や収納の設計などには大きな影響があることがわかります。子ども部屋の収納に防虫剤を使わないとしたら、「内装材はどうするか」「セーターなどのウールのものはどこに保管するか」など、考え直すことになるでしょう。
現在の暮らしを見渡してみると、新しい住まいを考えるときに役立つと思います。
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