
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
今回は住まいを資産と考えて、出来るだけ長く有効に活用することに目を向けてみましょう。このシリーズでも何度かお話ししたと思いますが、少し前の日本では、家屋の平均耐用年数は約25年でした。高い投資のわりには、あまりに短命です。
住まいの性能が良くなっていることと、これからは25年で使い捨てるゆとりが持てないことを併せて考えると、投資にふさわしい長期間の有効活用を考えていく時代といえるでしょう。
前回のメンテナンスも、孫の代まで使うとなると意気込みも違うはずです。子どもや孫の世代の生涯収支が改善されるだけでなく、老後にまだまだしっかり使える住まいがあることは、自身の収支も安定します。
●瑕疵と欠陥
昔とは建材などの条件が違ってはきていますが、住まいは長く付き合っていくものです。建物の耐用年数が延びていることも含め、引き渡し後も長い付き合いとなるので、資産維持の為にも工務店や販売業者と上手に付き合っていく必要があります。また、住んでみて初めて問題点に気が付くことも少なくありません。住まいにも主治医が必要です。
◇欠陥…
住まいは、多くの職人と多くの材料による1品製品ですので、何かしらの問題点が派生しがちです。悪意の欠陥は論外ですが、きちんと直せば問題のない場合、長い付き合いを考えて冷静な対応も大切です。重大な問題がある場合は第3者にセカンドオピニオンを求めて、客観的に判断してもらうことも必要でしょう。住宅性能評価書を交付された住宅については、指定住宅紛争処理機関に紛争処理を申請できます。
住まいを建てる前にこの記事で参考いただきたいのは、完成物件を購入する場合を除いて、きちんとした設計図書、きちんとした契約、スムーズな設計や工事段階のやりとりなどが、瑕疵を少なくするという点です。つまり、当初からやりとりがうまくいかないケースは、やはり最後まで問題が残りがちであるということです。
紛争処理の相談に乗っていた母校の教授は、「双方の話を比較すると、どちらに問題があるというよりも、大抵は双方にそれぞれ問題がある」と感想を話していました。最初からの真摯な付き合いがよい住宅を生み、長く育てていくことにつながるようです。性能は施主の技量に負うところも大きいのです。
◇瑕疵…
平成12年に、住宅の品質確保の促進等に関する法律が施行されました。その中で、新築住宅(新築後1年を経過していない未使用の住宅)の瑕疵担保責任の特例に対して、10年間の瑕疵担保責任が義務付けられました。
・新築住宅の請負人の瑕疵担保責任⇒注文者に引き渡した時から10年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵について、民法で定める請負人の担保責任を負う。
・新築住宅の売主の瑕疵担保責任⇒新築住宅の売主は買主に引き渡した時(売主と施工者が違う時は施工者が売主に引き渡した時)から10年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵について、民法で定める売主の担保責任に加えて、請負人の瑕疵担保責任を負う。
資産である住まいの健康状態を常に観察し、早めに対応することが、住まいへのダメージや費用負担をおさえることにつながります。
●住まいの活用
残念ながら日本は木造住宅中心で、建物の耐用年数も極めて短いために、良好な中古市場が成長していません。中古物件は新築と比較して価格が一気に下落する上に、あまり日本人は住まいの手入れに熱心ではありませんでした。しっかりと建てられ、しっかりと管理された優良中古住宅が市場に流通し、人生のその時々の状況に応じて住み替えできる方が、健全な社会に思いますが、やっと建物の寿命に対する認識が浸透し始めた段階で、今後中古住宅市場が活性化するかは分かりません。
何世代にもわたって家族が住み続ければ、それはそれで大きな有効活用ではありますが、もはや社会はグローバル化の時代です。どこに住むかということに関して誰もが流動的である時代に、我が家の活用はどう考えたらよいのでしょうか。
◇住み続ける…
日本の建築費はアメリカなどと比較して、非常に高くなっています。使われる材料や工法を実物で比較し、材料や工事に対する考え方の違いを考慮するとやむをえない部分もありますが、それであればその分長持ちして然るべきです。3世代で1軒の住まいを調達するサイクルであれば、1世帯の負担は少なくなります。
◇住まいを貸す…
有効活用を考えれば、単に高く貸せるように維持管理に気を配ることが第1です。再度住まうことがない場合は、売却と賃貸の収支比較を試みます。再び住まう可能性がある場合は、定期借家契約を利用する方法もあります。借家人を退去させるのは、現実なかなか厄介な問題でしたが、平成12年に新設された定期借家契約は、決められた手続きどおりに遂行すれば、当初の契約期間満了と共に完全に契約を終了し、自分で再度利用することが可能となります。
◇住まいを売る…
貸す場合と同様に維持管理が重要なのと、新築やリフォーム時の記録の保存も売却時には大切なポイントです。別の場所に長期居住する必要が生じた場合、社宅などを供与されない限り自宅を売却し、それを頭金にして新規に住まいを入手せざるを得ません。しかし、住まいの耐用年数が長ければ、子ども世代の負担は少なくなりますので、新しい勤務地で自宅を取得すると、今までの住まいで売却と賃貸の収支比較を試みるゆとりもできます。
つまり活用は、まずは長持ちさせることから始まります。
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