
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
Q:子供ができたので、生命保険を見直そうと考えています。いいアドバイスをください。
A:生命保険の意味を原点に戻って考えると、収入の補完です。夫婦で働いていれば、必要とする補完金額はわずかでしょうが、子供が生まれた後、両親のどちらかに万一の事態が生じれば、育児に時間をとられ、働く時間になにかしら支障が発生します。適切な保険選びには、どのくらい不足するかを正確に把握することが大切です。
適切な生命保険の掛け方は、その人の人生の考え方や状況によって全く違い、共通の目安はありません。まず何のために保険が必要かを再確認し、上記に述べたように「いつどれだけの資金が不足するか」が正確に分かれば、その時々の不足分だけ保険を掛ければ良いので、それがその家族の最適な保険となります。そのためには、家族の生涯設計と、それに伴うキャッシュフロー表を作成することから始める必要があります。キャッシュフロー表(ライフプランニングシート)は今までも、説明を重ねてきましたので、ここでは保険の基本的な考え方をまとめてみましょう。
●生命保険の基本的考え
日本人は「掛け捨てではない」に弱いようです。つまり何かしら満期に戻ってくるお金があると、得したような気になりますが、保険は掛け捨て、貯蓄は預貯金や投資で行うのが最も効率的で、有利な方法なのです。しかし、中には貯蓄が不得手な方もいらっしゃいます。給与や銀行から引き落とされ、多少の運用経費などを差引かれても自動的に確実に資産が増えるものはそれなりにメリットがありますので、臨機応変に考えましょう。
●必要補償額を左右する事項
極端に考えると、持家で夫婦共にキャリアの公務員で貯蓄もあれば、補償はそれほど必要がないといえます。ただし、高度障害になった場合など、治療費・介護負担などは死亡よりも負担が大きいことは考えておく必要があります。
◇会社員か自営か…有給休暇が保証され、休職しても病気が治れば復帰も可能な会社員と、仕事をしなければ得意先も失いかねない自営業者では当然リスクに違いはあります。
◇持家か賃貸か…持家であればローンが残っていても主が死亡した場合などは、団体信用生命保険で残債が返済できます。しかし賃貸住まいであれば、その後も家賃を払い続けなければなりません。
◇共稼ぎか専業主婦か…配偶者の生活力は必要補償額に大きく影響します。
◇収入・貯蓄状況・両親などの支援の有無等…一家の主が亡くなった時などに、一時的にでも実家に戻って生活の立て直しが可能かどうかなど、個々様々な環境によってもリスクは大きく異なります。
●万一の場合の収入と支出
最近は保険会社も、しっかり提案してくれますが、以前は万一の場合の支出だけ計算し、「こんなに必要です」などと説明され、日本人は過多な保険を掛けているケースが少なくありませんでした。支出から収入を差引いた額が必要補償額となります。基本は、働いて収入を得ることで、そのためのスキルを日頃から磨いておくことが、最大の保険となると思います。
◇収入…死亡退職金、遺族年金、貯蓄、障害者年金、妻の給与・年金など
◇支出…子供の教育費、就業するまでの子供の生活費、妻の生活費など
●子供の教育費の準備
子供の教育資金の準備のための保険で、高校や大学の入学時などに満期保険金が受け取れるものです。契約者である親が死亡した場合は、その後の保険料は免除されます。保険機能がありますので、自分で運用するよりは、貯蓄としての利回りは期待できないかもしれません。場合によっては掛けた分だけ受け取れないケースもあり、内容を確認の上、しっかり計算してからご加入ください。ただし子供がまだ小さく、養育費の負担が少ない時から自動的に引き落とされて確実に溜まっていく学資保険は、貯蓄が不得手の方にはそれなりにメリットがあります。
●医療保険
生命保険と同時に、医療保障についても合わせて考えると良いでしょう。生命保険にはほとんど医療特約がついていて、特約にするか、単独の医療保険を選ぶかの判断が必要となります。特約を選ぶ場合は更新時の保険料増額、保険金が支払われた場合の配偶者の特約の存続など、起こりうるいろいろなケースも想定して考える必要があります。残念ながら日本の社会も離婚が増えつつあります。医療保障は夫婦別々、それぞれ単独の保険が原則と考え、特約のメリットを検証ください。
医療保険を選択する場合のチェック項目をいつくか挙げておきます。親族の病歴や気になる項目を追加して、自分でチェックリストを作って各社の保険を比較してください。
◇何歳まで保証して欲しいか…「終身」や「平均寿命まで保証し、後は手持ち資産で」などを考えます。
◇何歳まで保険料を支払うか…保険料は60歳で払い済み、保証は終身であれば安心です。
◇入院給付は1日いくらぐらいが適切か…まだ若い年代の方は、将来自分が高齢になったときの物価も考慮に入れる必要があります。今の5,000円と30年先の5,000円では価値が違っているでしょう。高齢者医療制度や高額療養費制度なども考え合わせます。年齢に応じて保険料は高くなりますが、物価の上昇に合わせて増やしていく方法もあります。
◇月々の保険料はどのくらいにしたいか
◇1回の入院通算日数・全契約期間通算日数…通算給付日数が長ければ、その分保険料が高くなります。
◇必要な特約は何か…三大疾病保険・女性特有の疾患特約(乳房再建給付金などの特約もあるものも)
◇その他…リビングニーズ・高度先進医療給付など
保険を選ぶということは、人生設計とそれに伴う生涯収支をはじき出し、いついくらの不足が生じるかを知ることに他なりません。
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.interblog.jp/bizmt/mt-tb.cgi/586