
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
Q:日本住まいもインテリアも欧米化し、昔とだいぶ違うように思います。「インテリアデザイン」「インテリアコーディネート」などの言葉もありますが、どう違うのでしょうか。そもそももインテリアとはどのような領域のものなのでしょうか。
A:インテリアとは簡単に言えば室内部分の意匠ということになります。だたし、それは建築本体と明確に区分されるものではありません。特に日本の古来のインテリアは、構造体がそのまま見えていたり、構造的な役目も持っている部分が、意匠的に様式化されていたりしています。
インテリアとは、とてもポピュラーに使われている言葉ではありますが、実はとても説明が難しい言葉です。ゲーテが、「建築は凍れる音楽だ」といったそうですが、実に建築の本質を言い得ていて、ゲーテの偉大さをあらためて感じます。インテリアもその「凍れる音楽」の一部で、決して家具やカーテンなどで代表される「モノ」ではないのです。
●インテリアとは
ホテルのような大規模の建物で、様々な要素が混在する場合は、たとえホテル全体が地中海風にまとめられていたとしても、インテリアデザイナーが、中華レストランや和食の料亭のインテリアを設計することはあります。彫刻家やテキスタイルデザイナーなども参加する場合があります。この場合インテリアの部類はとても分かりやすいものになります。しかし、たとえば教会をイメージしてみてください。教会を設計する建築家が、最初に無味乾燥な鉄骨やコンクリートの架構をイメージして、その次に装飾を考えていくのではないことは、誰でも想像がつくと思います。どこからがインテリアなのかも明確には説明できないでしょう。そもそも建築を考える場合に、構造体つまり本体の形を先に考えて外装・インテリアと順々に決めていくものではありません。建物のデザインも庭のイメージも外観もインテリアも全て同時に考えます。いろいろな角度からイメージを作り上げて、ある瞬間全体像として結実させるものです。
●インテリアデザインという分野
つまり、インテリアの創造は、建築全体の創造と渾然一体となって、音楽を具象化していく作業に他ならないと思います。従って、インテリアは本来建築と未分化のものであり、建築家がトータルに想像していくもののはずです。「インテリアデザイン」や「インテリアデザイナー」という分野が現れたのは、複合的な建物が存在するようになって、商業ビルにテナントとして店舗が入居したり、人間工学的に効率化を求めてオフィス環境が問われるようになったりして生まれ始めたもののように思います。
●住まいと住み手とインテリアデザイン
住まいは異種の要素が複合的に存在する建物ではありません。原則建築家がインテリアも含めてデザインする分野だと思います。事実世界的にも、有名な建築家が歴史に残る家具や照明器具を産み出してきています。しかし家具や照明器具までオリジナルデザインにしようとすると、それなりの技量と労力と費用が必要となります。従って多くは既成の商品から選択することになります。
一方、住まいは建築の中では特殊な存在です。何代にもわたって住み続けたり、全く見ず知らずの他人が新しい住み手となったりする場合があります。日々快適に暮すには、それなりに道具や設えが必要になります。それらが建物の中で、調和して存在しなければ快適ではありません。住み手にその後の多くをゆだねられているのが住まいなのです。
●インテリアの資格
現在日本には、インテリアに関する資格がいろいろあります。住宅関連でも「インテリアプランナー」、「インテリアコーディネーター」があり、資格ではありませんが、インテリアデザイナーと名乗っている方もいらっしゃいます。キッチンやテキスタイルなどのスペシャリストの資格もあります。最近は福祉関連の資格も住宅業界に人気のようです。これらはどう違うのでしょうか。どのような背景で生まれたのでしょうか。
前後生活や住まいが欧米化し、今まで以上に家具や道具類が室内に存在するようになりました。障子に代わりカーテンが、ダイニングテーブルやソファーセットとクッション類、デザイン化された照明器具など、色使いも豊かになり、一定の統一感がないと落ち着きのない空間になってしまいます。ここにインテリアをアレンジするというニーズが出現します。一方、高度成長に伴い多くの住宅が必要とされる中、一定の品質と安心感などから住宅メーカーが成長してきました。多くは規格化されたイージーオーダーですので、一つの住まいに建築家が濃密にかかわることはありません。専門家不在勝ちになる中、インテリアコーディネーターのニーズが高まってきたと思います。
さらに政府が景気の維持に住宅政策を長年重要視してきました。「インテリアコーディネーター」は経済産業省主導の資格です。住まいのインテリア計画の立案やインテリア商品の選択のアドバイスが主な業務ですが、基本的にはインテリア商品という「モノ」があってこそ成り立つ資格です。一方、当時の建設省主導の資格が「インテリアプランナー」です。資格者の承認でインテリア工事にも公庫の融資が下りる仕組みになったことから、建築士もやむを得ず資格を取得しました。多少資格取得の難易度や、位置付けに違いはあるものの、その他の資格も含めて、「モノ」の販売を促進させて、経済を活性化させようとする政府の意図が見え隠れします。
日本の住まいもかなり広くなってきたとは言え、やはり、あまりに「モノ」があふれすぎているように思います。インテリアも足し算だけでなく引き算で考え、すっきり健康的に暮すように発想の転換ができないものでしょうか。結局、いかにインテリアを建築の中に昇華していけるかが問われそうです。
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.interblog.jp/bizmt/mt-tb.cgi/611