
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
Q: 前回のコラムによると、インテリアに関する日本の文化は、時代と共に変化せざるを得なかったわけですね。でも日本人の好みとして、受け継いできたものは無いのでしょうか。
A:現在では、生まれたときからマンション暮らしという世代も増えてきていると思いますので、難しい点ですが、高温多湿の日本の風土であることには変わらないので、共通のニーズは存在していると思います。
仮に家族の個室が全て用意されて、そのほかどうしても欲しい書斎や趣味の部屋が確保でき、もう一部屋可能であれば、和室が欲しいとは思わないでしょうか。客間としてベッドより多人数の宿泊ができ、多目的に利用できる点や、やはり畳の感触を楽しみたいのもあるでしょう。夏になるとスーパーにヨシズや簾、ゴザなどが、並びますし、イグサを使った商品もいろいろありますので、やはりニーズが多いのでしょう。
カナダの製材工場に行った時に、向こうの担当者に「木はいろいろな部位や等級があり、適材適所に余すことなく使うべきなのに、日本人はそれほど必要性も無いのに節無しの最上級のものにこだわりすぎる」と暗に批判されました。木に対するこだわりも大きいですね。
●白木の文化と靴を脱ぐ文化
靴を脱ぐ文化は意外とインテリアの嗜好に大きく関与しているように思います。特に床面は、素足に触れ、ゴロンと横になったら体の多くの部分が接します。だから、さらっとした感触のイグサの畳や、やわらかい杉材などが利用されてきました。木材は一種一種適材適所に利用され、節などの有無で等級も細かく決められています。北米の場合のように、「このエリアの樹種群」といった使われ方や呼ばれ方はありませんでした。木は樹齢分長持ちするといわれます。表面を埋めてしまう塗装は、肌触りがよくありませんし、また木の呼吸を妨げ、性能を落とします。桐材の細かい気泡は、断熱効果と調湿効果を発揮し、大切な衣類を保存するのに適しています。塗装しては意味がありません。またその性質のために、高価ですが、床材として使うと、驚くほど暖かく冬でもひんやりとしないのです。
●建材の復活
天井は杉板、床はやはり無垢の板かたたみ、壁はしっくいなどの塗り壁、日本の古来の素材はどれも自然の素材で自然の色。これらの建材はどれも調湿効果があり、高温多湿の日本の風土に肌触りのよいものばかりです。床材は一時カーペットが流行しましたが、結局木材の床に戻りました。壁もビニールクロスから、最近は珪藻土などの塗り壁が見直されています。木のサッシの断熱性も見直されていますね。インテリアの選択には気候風土が極めて重要な要素であることを、内装材の変遷が示しています。
●季節を楽しむ
夏になるとスーパーにヨシズや簾、ゴザなどが並ぶことは需要があるということです。それはマンションが建ち並ぶエリアのスーパーでも同様です。ということは、生活スタイルも住居の様式も変わっても、変わらないものがあるということではないでしょうか。ゴザなどはやはり心地良いので分かりますが、ヨシズや簾の類はどうしてでしょうか。おそらく、窓を開けると既にあるレースのカーテンでは風で揺れて役に立たたず、プライバシィ確保の為と思われます。見た目など涼しさを感じることも要因でしょう。逆に都内のマンションで考えれば、断熱性能が高く、風を通せば涼しく過ごせます。政府の推奨冷房温度は28度ですが、風を通せばそれを超える日はそんなに多くありません。だからむしろマンションの方が、需要が多いとも考えられます。そのことを含めて当初のインテリアを考えておく必要がありそうです。
また、戸建住宅でもリビングに掘りごたつを作る家庭もあります。昔の住まいは断熱性能も機密性能も低く、暖房も火鉢などに頼っていたために、効率よく暖を取れるこたつは重宝だったと思います。しかし、現代は掘りごたつの必然は無いのに何故でしょう。床暖房を併用すれば、ゴロンと気軽に横にもなれ、家族それぞれ自由なスタイルでくつろぎながら、家族だんらんが楽しめます。温もりのあるイメージも、好まれる理由かもしれません。また、正月、節分、ひな祭り、端午の節句、七夕…と、いろいろ季節を楽しむ風習もあります。これらを飾る場や楽しむ場などにも配慮したいものです。
都市化によるマンションの普及や、密集化による防災面、地球環境保全などにより、住まいのスタイルは大きく変わり、豊かになり暮らしも変わりました。しかし、気候風土から必要とされる機能は、変わりなく受け継がれます。気候風土をいかし、機能的なインテリアであることが大切です。また、それぞれの季節の厳しさをやり過ごす為の工夫に見られる日本人の感性も大切に受け継ぎ、現代のインテリアにも生かしたいものです。
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