
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
Q:折々の年中行事を楽しむ上で、住まいはどう関係するのでしょうか。住まいを取得したり建築したりする時の配慮すべきところはあるのでしょうか。
A:季節折々のしつらえを楽しむ為には、環境によってかなり違いもあると思いますが、住まいが季節を身近に感じられるように工夫され、室内がすっきりとしていると、よりいっそう行事を楽しむことができるでしょう。伝統行事は暮らしに潤いやメリハリを与えてくれます。工夫次第で、季節ごとの行事を楽しむことができると思います。
伝統行事を楽しむには、様々な要素が関与しています。現代は、庭がなかったり、地域的なつながりが薄かったりなど、季節の変化を感じさせる外的刺激が必ずしも万全だとは限りません。しかし、少なくとも家の中は、「季節のものを飾りたい」「行事を楽しみたい」と思わせるものでなくてはなりません。『日本の文化とインテリア』-2のコラムでも述べましたが、昔の暮らしと比較して「モノ」が格段に増えています。シンプルな暮らしや機能的な収納を工夫して、住まいを白いキャンバスだと考えると、いろいろな行事を描いていけるように思います。
●季節と行事を楽しむ住まいとインテリア
季節や行事を楽しむことと、住まいやインテリアの工夫と関係があるか、実際の行事などを思い浮かべながら、考えてみましょう。
◇豊かな精神的空間…例えば、『日本の文化とインテリア』-2のコラムでも引用した「お月見」について考えてみましょう。幸いに庭に面して大きく開け放つことができる広縁があったとします。小さなテーブルやお盆に、お団子とススキを飾り、虫の音を聞きながら月を眺める。この光景には、お盆と飾りと人間以外何もない、広縁のその他の余白部分が刷り込まれています。すっきりとした室内で、「淋しいのでお花でも飾ろう…」くらいの方が、花そのものが空間の中で生きてきます。
(床の間)床の間はそれ自体に精神性を持たせた空間です。一畳ほどのスペースに小さな一輪挿しなどをそっと置く。残りは余白です。掛け軸を季節や行事にちなんだものに替えたり、人形を飾ったり、日本の住まいには床の間がハレの日の表現の場でした。ヨーロッパでは暖炉がこれにあたるでしょうか。このような場所があると必然的に、花や季節のモノを飾りたくなると思います。床の間がなくても、その様な象徴的な場を確保すると良いと思います。
◇人の集まりと食事…昔は行事となると、空間を広げるため二間続きの部屋をぶち抜いて、座卓をつなげて食事を楽しみました。一堂に集まって食事は行事にはつきものです。例えば、リビングにつながる和室の高さを少し高くすると、ソファに座っている人と目線の高さが揃い、一体感が生まれます。多目的の大きなダイニングテーブルにしたり、アイランドキッチンにして、わいわいみんなで料理を作りながら楽しんだりと、人が集まる住まいにすると、行事はいっそう楽しいものとなりそうです。
◇自然を感じる…行事は季節に対する感性に基づくものがほとんどのように思います。季節を感じ、その移ろいを楽しむ工夫はいろいろあります。日本人は中庭・テラスなどような空間が好きです。最近はマンションでも広いバルコニーが人気です。ちょっとしたデッキチェアとテーブルがあれば、自然と仲良くなれます。
(植栽や草花を配置する)桜や紅葉など、花や葉を楽しむ木を植える。2階からも楽しめるように木の成長を考え、毎年決まったときに花や実をつける植物を植えると、毎年花の季節が楽しみになります。
(半戸外の空間を作る)バルコニー・テラス・中庭・パーゴラ、フルオープンのサッシなど、昔はオープンでしたので、このような場が地域の社交の場でもあり、共に行事を楽しむ場でもあったと思います。
(窓辺の工夫)窓台やフラワーバルコニーなどに鉢を置いたり、季節のカーテンなどを掛けたり、夏であれば、音の小さな風鈴を掛けてるなどしてもいいと思います。
●行事と道具
日本は古来の伝統行事も多いですが、昔から外国の文化を取り入れるのも得意です。日常的に家庭で食されている料理も、和洋中のほかにイタリアやロシアや韓国やタイ・・・多種にわたります。ですから食器の量は他の国と比較して多いと思います。しかも平らなお皿が主のヨーロッパと違って、様々な形の食器があります。衣服も、四季のハッキリしている日本では季節ごとに種類があり、洋服以外にも、留袖・喪服・訪問着の類・浴衣・子供のころや成人式の着物などといった和服もあります。とにかく日本人は持ち物が多いとお思います。お歳暮や引き出物などの風習も影響しています。
お正月用品・雛人形や付属品・五月人形など年に一度しか使わない行事の道具もありますね。使用頻度も高くないので収納の奥底に押しやられがちです。道具もあまり大掛かりなものでなく、しかも取り出しやすい収納の工夫が、気軽に楽しむ上で大切のように感じます。
行事の伝承は住まい以外の要素が大きいと思いますが、使いやすく充分な量の収納やモノを増やさずシンプルな暮らしの中から、空間的にも精神的にも行事を楽しむ余地が生まれると思います。
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