
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
Q:最近、風水に関する話題をいろいろ耳にします。家相というのも気になります。インテリアを考える場合も、風水や家相に配慮した方が良いのでしょうか。
A:風水や家相は、もともと中国から来た考え方で、中国の気候や風土に基づいたもので、そのままでは日本に上手くはまりません。中にはもっともな内容もありますが、それらはそもそも住まいを設計する上での理論や手法、考慮すべき事柄の中にもあるものです。しかし、古くから受け継がれてきた考えであるので、何かしら風水や家相が由とするものを取り入れると良い効果があるのかもしれません。
人類が猿から分化して進化してきたダーウィンの進化論と、キリスト教の理論は相反します。宗教的観点から、進化論に異議を唱える団体もあると聞いたことがあります。現代の日本人は無宗教といわれていますが、山や太陽に畏怖を感じ、一つのゆったりした価値観と共に生きてきました。確かに太陽系に地球が存在し、生命が生まれて、偶然が重なり、今自分がいると感じると、不思議な感じがし、自然に敬意を感じたりします。何か心に不安があるとき、信仰心によってやすらぐことも少なくないでしょう。また、起きた事情に変化は無くても、捉え方で「信じていたから、この程度で済んだ」と考えられれば慰められ、「信じていればこんなことにはならなかった」と言われれば、後悔の念が起きるかもしれません。
いままで、私が接した中では、家相や風水に過度にこだわる方はそう多くはありませんでしたが、あるとき家相の考えを全て取り入れて、「家相どおりにすると、このプランしかないので、これで建ててくれますか」という方がいました。風も通らず日も当たらない、日常の動線は無視…こんな家に住めば、たちまち精神や肉体に支障をきたすような間取りでした。人の不安感をあおり、自分の存在価値を示そうとする風水の専門家に指示された極端な例もないわけではありません。また、家相などは人によって諸説あり、江戸時代などに大きく変化した部分もあり、全く同じではありません。風水や家相を取り入れる場合は、末端の事柄ではなく、原点の思想や考え方を理解し、現代の日本に置き換えて考える必要があります。
●風水・家相は原点に返って考える
家相でいわれる「鬼門」とは北東の方角です。これは中国で、匈奴という遊牧騎馬民族が、この方角から度々襲来し、恐れられたことに始まるといわれています。万里の長城も匈奴の侵入を防ぐ為に作られたものです。いかにその脅威が大きなものだったかが分かります。日本でも京を作るとき、中国のこの思想を踏襲し、御所は比叡山を鬼門になるように配置したとも言われます。その後江戸時代から庶民に流布し、占いの一部のように変形し伝承したといわれています。
しかし、由来はともかく、災いから国や住まいを守り、その地の気候風土や環境に対して、良いと思われるものを伝承することは悪いことではありません。大切なことは、その地の気候風土や環境、考えられる災いに即して考えることで、はるか遠くの地の対策を真似ることではありません。
●現在の住まいの性能と家相
昔の住まいは隙間も多く、断熱性能も低く、冬はかなり寒いものでした。トイレや脱衣室などは暖房も無く、かつ衣服を脱ぐ場所であり、脳卒中が置きやすい場所とされていたために、「トイレは、北東の寒いエリアは不適」とする考えは、理に適ったものでした。しかし、現在の住まいは高気密工断熱が基本。全館空調だと、原則どこも暖かく、しかも楽な洋式トイレで暖房便座となれば、昔の考えだけにとらわれる必要はありません。
むしろ建材や芳香剤・家具・殺虫剤・洗剤などの化学物質によるアレルギーの問題、防犯の問題、柔らかな木材以外の金属などが多用される住まいの機器や建材による危険、様々な電化製品の取扱いなど、新しい危険に対するしっかりした認識の方がはるかに重要です。
●我が家の気候風土
もともと風水や家相の考えを、日本の気候風土や環境に置き換えて考えること以外に、その住まいが立地する環境について考えるのも大切です。
以前、郊外のある地域に住まいを建替える計画に際して、現地確認と施主からの要望などの聞き取り調査をしていたときに、「この方向の窓は最低限に」といわれました。北西に近い向きでしたので、さほどそのことに支障がなかったのですが、理由を聞くと、住宅地ではありますが、北西の方向は広大な農地が広がっています。畑の土が風に乗って飛んできて、アルミサッシを閉めていても、一日に何度も掃除が必要とのことでした。みれば確かに窓枠には、かなり細かい粒子の砂が一面にかぶっていました。まだまだ急速に都市化するとは思えないその地域で、その家にとって北西の方向はまさに鬼門といえます。
災いを避け、安全に快適に過ごすための先祖の知恵に敬意を払い、末端の事象ではなくその精神を学ぶことが大切だと思います。そして、現代の日本や実際の住まいがある環境に当てはめて、その精神を生かしていければよいですね。さらに災いは時代と共に変わっていきます。古い時代の災いの対処方法だけを踏襲しても意味がありません。
コラム2で、伝統的に行事を楽しむ為の住まいの工夫などを考えて見ましたが、そもそも伝統行事も、元は中国からというのも少なくないですね。おせち料理についても、一つ一つの食材の吉とされるその理由は語呂合わせのような、たわいないものです。あまり深く考えずとも、風水なども生活にメリハリを作る意味で行事同様に楽しむのも良いでしょう。
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