MODERN Club/不動産よくある質問Q&A

 『季節と日本の行事とインテリア』-4 これからの住まいと行事の楽しみ方[question]

Q:地域の連帯感が薄れていると言われていますが、高層マンションなどでの暮らしでも、伝統行事は受け継がれていくでしょうか。伝統行事を楽しむ為にはどうしたらよいでしょうか。

A:住まいの性能や機能は、既に一定レベルまで達しています。次世代のトレンドは「心地よさの追求」だとも言われています。同時に格差社会を見据え、使い捨ての消費生活に対する反省も含めて、より精神的なものを求めていくのではと思います。その時に日本の伝統行事が見直されるとうれしいですね。

戦後の高度成長期は、モノにあふれた時代でした。しかし、バブルもはじけて「もったいない」が、見直される時代となりました。「もったいない」という言葉は、直接の意味以上に、モノを大切にする心の豊かさを表現していると思います。茶道は、単なる手順の伝達ではなく、豊かな心の伝承であるということでも分かるように、伝統行事を通じて、静かで穏やかな暮らしの良さを見直し、そして住まいはそれを実現できる場でありたいと思います。


●道具の伝承

現代の一般の日本人は、子孫代々に伝えたい道具はどのくらいもっているでしょうか。中でも行事に使う道具は、原則一年に一回しか使いませんので、使用頻度を考えれば、何代も先まで使えるはずです。特に良いものは長持ちします。優れた工芸品は、納戸の奥底に仕舞いっぱなしではなく、年に一度くらいは手にとって眺めてみたい気にもさせます。どの家庭も子供が小さいときは、熱心に年中行事を行います。よいものは子供にも分かります。子供の情操教育的意味合いや行事の伝承には道具の伝承も重要な側面のような気がします。茶道でも道具は重要な位置を占めていますね。

私が子供のころの雛祭りを例にして、考えてみましょう。その雛人形は祖母の花嫁道具でした。

(飾りつけ)…人形に埃がつかないように、事前に部屋をとりわけ念入りに掃除します。人形の箱が納戸から取り出されたら、そこからは緊張を強いられます。人形を壊さないように静かに作業するように言い渡されます。人形の由来やそれぞれの人形の意味などの説明を受けながら、手で扱う時の人形を持つ位置、付属品の扱いなどの注意をされます。飾った後は、その部屋に入ったら静かに立ち振る舞うように命じられました。

(片付け)…冠や扇・束帯、楽器類などの人形の付属品類を丁寧に取り外します。極めて細いので、乱暴に扱うと折れたりします。次に柔らかい筆で、人形や道具の埃を丁寧に払い落とします。一体一体和紙に包んで箱に仕舞います。

このゆったりとし、かつ緊張を伴う一連の作業は、今にして思えば茶道の所作のような感じです。文化の由来を語り、道具の由来を語り、所作に対する手順と心構えをしつけていく、伝統行事の伝承は、このようなことではないかと思います。祖母の雛人形は今現在100年近くたっていると思いますが、今後も数百年伝承されていくと思います。戦後に買い足したその他の飾り類は、伝承の価値がなく50年足らずで処分となりそうです。


●現代の床の間

最近は和室のない住まいも少なくありません。マンションであれば、なおさらだと思います。床の間があれば自然と何かを飾ることになりますが、ないと何となくメリハリに欠けます。住まいを手に入れる場合は、ちょっとしたニッチや、収納や開口部の位置を工夫して、まとまった壁を作ると、潤いが生まれます。住まいは住み手が創造性を発揮できる余地を作っておくことが結構大切なのです。
低いサイドボードの上やローカウンターの上でも良いと思います。季節の花を飾ったり額をかけたり、クリスマス、正月、雛祭り、端午の節句、七夕など、ちょっとしたモノを飾って楽しむこともできます。このように床の間がなくても日常のものが進出しないスペースを確保しておくことをお薦めします。

以前にも例にしたことがありますが、住宅展示場のインテリア設計はインテリアデザイナーの仕事ですが、日常の管理や設えは女性のアドバイザーが受け持っているのが一般的です。展示場はあくまで住まいを見せるものですので、クリスマスや季節の飾りつけは、「住まい」という商品を邪魔するものであってはなりません。訪れる人が、季節折々の暮らしをその住まいの中で夢を描けるようなさりげない表現が求められます。このアドバイザーが変わるだけで、全体の雰囲気が、大きく変わるのが不思議です。つまり、ちょっとしたことでも充分に表現が可能だということだと思います。


●地域と楽しむ

都会でも祭りは何処でもあり、町内会などの組織もあります。確かに、都会には知らない人同士が暮らし、特にマンションなどは、「隣は何をする人ぞ…」という傾向も否めません。しかし、「ご近所の底力」と言う番組がありように、最近は地域内のコミュニケーションの大切さが見直される傾向にあります。また大きな災害を通じて、ボランティア活動や住民同士の助け合いの活動の中で「ともに暮す」ことへの新しい試みが報道されたりします。新築マンションを購入する年代は30代が中心で、ほぼ同時期に子供を育て、巣立ち、高齢化していきます。そのような高齢者が中心となってしまうマンションがこれからも増えていくと思われます。私が住むマンションもその一つですが、最近住民同士で「ともに暮す」試みが生まれつつあります。「村=ともに暮す所」の復活が、これからの時代のテーマかもしれません。

「村=ともに暮す所」の復活と共に、地域と密着した行事も増えていくでしょうが、逆に考えれば、季節折々の伝統行事は、近隣の住民との楽しい食事やコミュニケーションの場を提供してくれる役割も果たすように思います。


4回にわたって、伝統行事とインテリアについて考えてきましたが、これからの時代に伝統行事は、とても大きな力を秘めていそうです。「良いものを大切に使う」「モノに占拠されないシンプルな暮らし」「収納の工夫」「床の間に代わる表現の場の確保」「ご近所の連帯の回復」・・・空間と心の余白をたくさん作って、伝統行事を伝えていきたいものです。

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