
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
今回は、「インテリアと照明-2」でご紹介した「明かりの基本的演出」に引き続き、具体的なそれぞれの部屋に演出方法を当てはめて考えていきます。
●部屋別のあかりの演出
部屋は多機能・多目的であるほど、ライティングコントロールが難しくなり、重要度も増します。ライティングコントロールが重要である部屋について、そのポイントを考えてみましょう。
◆リビング
リビングで行う活動は多岐に渡ります。新聞や本を読む、TVを見る、食後にくつろぐ、お酒を飲む、ソファーでまどろむ、パソコンでインターネットを利用するなど、実に多目的です。また、ディスプレーの場として、季節の行事の飾り物や家族の写真、絵画などが飾られる場所でもあり、こうしたリビングの照明を天井灯一つで賄うには無理があります。そこで、スタンド、ダウンライト、ブラケットなどを適材適所に配置して、その時々で使い分ける方が合理的で快適です。明かりのスイッチは、まとめて一箇所でコントロールできるようにすれば、煩雑さも避けられます。
◆ダイニング
食卓の上を明るくするペンダントは、テーブルから60~80cm程度離して配置すると良いでしょう。器具の大きさや数は、テーブルサイズに合わせて決めます。また、ペンダントだけでは周囲の明るさが不足しがちなので、ダウンライトで補うと良いでしょう。ダイニングテーブルで宿題をこなす子供も少なくなく、その他にもさまざまな作業をするのに便利ですので、食事のためだけでなくリビングとしての用途も併せて考えながら、照明計画をすることが大切です。
◆主寝室
寝室の照明は、ベッドで操作できるようスイッチやリモコンを工夫すると良いでしょう。主寝室は夫婦だけの居間としての役割も持ちますので、照明や家具を駆使しながら、小さくてもリビング的なコーナーを作るのもおすすめです。椅子が2脚と小さなテーブル、スタンドやブラケット、ダウンライトなどの照明があれば十分です。就寝前の読書やちょっとした語らいの場を照明で演出してみましょう。
◆老人室
基本的には主寝室と同じですが、高齢の方は次第に自室で過ごす時間が長くなる傾向があります。そこで、枕元で照明をコントロールできるようにしたり、リモコンを利用したりと、操作を楽にすると良いでしょう。加えて年と共に、まぶしさを感じやすくなりますので、程よい明るさに調光できると便利です。ただ、白内障の方には全体が黄色がかって見えるので、白熱灯(黄色の光)の下では一層見えにくくなる可能性があるので注意しましょう。また、暗い部分があると危険度も増しますので、やはり部屋全体は明るくした方が良いでしょう。さらに、夜間、トイレに立つ時のことなどを考えて、常夜灯やフットライトがあると便利です。
●これからの時代の住まいと明かり
住まいは安らぎの場であり、「食事をして、心と体を休め、子供を育てて・・・」など人間としての基本的な営みに関与する場といえます。しかし、こうした営みは、社会の変化と全く異なったサイクルというわけではありません。ここ数年、社会の変化は目まぐるしいものがありますし、今後は雇用形態の多様化に伴い、家で仕事をする人も多くなってくるでしょう。また、格差社会を背景に、社会人が自宅で勉強しなければならない状況も出てくると思います。
たとえば夕食後、妻は急ぎの仕事でパソコンに向い、夫は持ち帰った仕事をチェックや昇級試験・資格取得試験の勉強、子供は宿題や受験勉強、などといった場面も容易に想像できます。それぞれが作業をするにはかなりの明るさが必要です。
したがって、そうした作業を行う場所の照明は、安らぎを与える白熱灯の色調よりは蛍光灯が適しているといえます。また、蛍光灯のメリットは経済面にもあります。各個室をそれぞれ煌々と照らし続けるのは経済的ではありませんし、個人の部屋は基本的に就寝の場です。それゆえ、リビングを空間的にも照明的にも多機能に利用できるように工夫し、互いに気配を感じながら、それぞれの課題に取り組むような場を演出するのが理想的でしょう。リビングが家族の作業の場となれば、経済的なだけでなく家族の結束にもつながります。いわゆる休息志向の団らんではありませんが、家族として得られるものは多いような気がします。
このような空間の演出方法は、いろいろと考えられます。たとえば、
・子供室を最小限にして、リビングダイニング&勉強コーナーの面積を増やす
・ダイニングテーブルのサイズや高さを工夫し、食事以外の役割を持たせる
・休息用のソファーをセットで揃えず必要最小限にする
・パソコンコーナーを工夫する
など、今後は従来の寝室数+LDKのスタイルやセット家具にとらわれずに、新しい時代に必要とされるスタイルを追求することが求められるでしょう。そして、家族が集う場の空間作りにおいては、必要照度を確保するためだけでなく空間を区切るという意味でも補助照明が重要な役割を果たします。リビングに自分の居場所があれば、家族は自然と集まりやすくなります。
場作りの3点セットは、椅子、机・テーブル、照明です。それらが適当な距離をおいて設置されている必要があるのです。テーブルは、本格的なパソコンの操作などの作業の場でないかぎり、本を置いたり飲み物を置いたりできれば、ごく小さいものでもかまいません。照明は、光が届く範囲にテリトリーを作りだしますので、単に明るくするという機能以上に空間作りには欠かせない重要な要素なのです。
このように、住まいと社会変化は決して無縁ではありません。社会に即応した住まいを目指し、照明計画にも新たな工夫が求められているのです。一つの空間を多機能に活用するために、照明はこれからもますます重要な要素となってくるでしょう。
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