MODERN Club/不動産よくある質問Q&A

 『日本の伝統スタイルと現代-2』 「仕舞う」に見る収納文化[question]

「仕舞う」とは、実に美しい言葉です。大切なものを、然るべきところにきちんと保管する所作を、この言葉は表しています。しかも、「仕舞いっぱなし」という言葉があるくらいですから、「仕舞う」には、日々、使用する道具の扱いに対する日本人の美意識をも表しているように感じられます。「仕舞う」ということを突き詰めていくと、暮らしそのもののあり方が見えてきそうです。

箪笥(タンス)の文化

戦後生まれの人間にとって、箪笥の代表的なものといえば婚礼セットでしょう。洋服ダンス・和ダンス・整理ダンスなどのセットで、あまり複雑な作りのものではありません。
しかし、時々テレビ番組などで登場する昔の箪笥を見ると、その精緻なつくりに驚きます。隠し扉があったり、所定の手順で開けていかないと開かないからくりがあったり、船ダンス、薬ダンス、茶ダンスなど用途に応じて、様々な工夫がされていたりします。茶ダンスなどはつい最近まで見られましたが、洋風のサイドボードなどに取って代わられたのでしょうか、あまり見かけなくなりました。さらに作りつけの家具が一般的になり、婚礼セットそのものの収納に困る事態も発生しています。

しかし、しっかりとした家具の優れた保存機能は、衣類を傷めずに長く着るために欠かせないものです。特に、茶ダンスなどはもっと見直され、現代の暮らしに適したものがあると良いのではと思います。乱雑になるベッドの周辺を整頓し、清潔に保つための家具が一つあるだけで非常に助かるのではないでしょうか。(※バックナンバー参照:第2の人生と住まいと暮らし)あるとき、ベテラン漫才師(女性)の自宅拝見のテレビ番組で、大きな茶ダンスが紹介されていました。下町風の暮らしで、こたつを前に座ると背中には特大の茶ダンスがあり、座ったままですべてのことが処理できると話されていました。今後は、これらの伝統の家具の良さを現代の生活スタイルに生かしたものを利用していく必要がありそうです。また、自分の衣類の内容や今後の生活スタイルを充分に見据えた家具を慎重に選びたいものです。


蔵と納戸

そもそも正倉院の宝物殿の校倉造(あぜくらづくり).の工夫でも分かるように、日本人は高温多湿の気候風土の中、モノの保管には特別な文化を育んできました。民間の蔵についても、本来収納物は定期的に手入れがされてきましたし、一般の生活の中でも「虫干し」(虫やカビを防止するために、本や衣類を外に出して日に干したり、風にあてること)は、昔はどの家庭でも毎年行われてきました。

しかし、蔵は管理する人手が必要ですし、一般住宅の納戸についても、奥のモノを取り出すのは、相当のエネルギーを必要とします。専業主婦が大半であった時代と違って、女性の社会進出が進むと、納戸を定期的に管理する余裕はありません。衣替えの際の衣類の入替えだけでも負担になるでしょう。以前は、住まいの間取りの検討段階になると、一様に「納戸が欲しい」と熱望されましたが、定期的な管理ができなければ、使わないものの保管場所になりがちです。それでは建築費とスペースの無駄使いとなってしまうでしょう。

家事労働の削減のためには、季節ごとの衣替えが必要ない大容量のクローゼットがあるだけで便利です。また、ドアを大きく開けば一目瞭然の、奥行が浅く間口の広い収納での「仕舞う文化」を新たに作り上げる必要があります。一目瞭然であれば、衝動買いしてしまって結局あまり使わないものにも目が行き届きますし、暮らしを見直す警告を発してもらうことができるのです。家事ストレスの少ない、シンプルライフを探りながら進める日々の収納が、「これからの仕舞う文化」のように思えます。


モノの量と「仕舞う」

再度「仕舞う」という言葉について考えてみましょう。それはモノがあふれ、不要品の山に囲まれた状況とは相反するものです。昨今、「もったいない」という言葉が再認識されていますが、本当に必要な長年使いこなせる質の良いものを吟味し大切に使う文化を学びなおす時が来ているようです。「仕舞う」は、モノが溢れ、そのことによるストレスを感じる現代こそ、再認識したい言葉です。先人に学び、美しく仕舞えれば、家事の負担も軽減されストレスも少なく、くつろげる住まいとなると思います。

とはいえ現代は、小さな空間の洗面所ひとつを眺めても、ひと昔前にはなかったものばかりでしょう。現代の暮らしに適した収納方法を追求することが、「仕舞う」文化を継承することにつながります。使いにくい納戸や、寝具の変化で布団を収納する必要性を失った押入れなど、昔の収納スタイルにとらわれることなく考えていくことも必要です。


これからの収納のポイント:
「一目で見渡せる奥行きの浅い収納」「使うところに収納」「古来の収納スタイルにとらわれない」

時代のニーズに合わせて改革しながら、モノを大切に「仕舞う」精神を大切にしていきたいものです。

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