
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
最近では、景観法の成立に伴い、良好な景観や環境に対する意識が次第に高まりつつあるようです。幸い日本には、江戸時代の景観を維持した宿場町が残っており、美しく秩序ある家並みや通りに面したその地方独自の連格子(つれこうし)などは、非常に心地よい環境を保っています。
こうした心地よさを、そのままの形で現代に生かすのは難しいでしょうが、良い環境作りの一歩は個々の住宅にもありそうです。そこで今回は、これからの時代の住宅における環境整備について考えてみましょう。
●建物の外観
日本の伝統的外観を形作る重要な要素は「屋根」です。日本は雨の多い気候のせいか、様々な機能を兼ね備えた美しい屋根の形が作られました。建物を作る際にも、雨から建物を守る為に、とにかく大急ぎで屋根をかけます。屋根がかかった段階で「上棟」となり、無事屋根がかかったお祝いをしたりします。下から順々に作り上げる石造りや2×4工法とは大きく違います。外壁についても、蔵や商家などの建物の用途や、海辺や風の強い地域などその地域の気候に合わせたスタイルがあります。連格子(つれこうし)など、その地域独自のデザインが見られるものもあります。
しかし現在、建物の外観をすべて古来の伝統にのっとって作っていくのは困難です。生活様式の違いが外観に反映されるだけでなく、防火面の規制が厳しくなっているのも大きいと思います。都市部では、板張りの外壁は防火的に使用できません。
●町並みの構成
外観が伝統的なスタイルを踏襲できなくなっているとしたら、美しい町並みづくりはどのように考えればよいのでしょう。日本の伝統的な町並みやヨーロッパの町並みを思い浮かべてみると、美しい町並みとは、高さや規模、色調や材質が調和しているものが多いと考えられます。「軒を連ねる」という言葉があるように、同じような屋根が続いている町並みには落ち着いた雰囲気があります。多くはその地域独自の建築様式で作られているため、一体感もあります。ヨーロッパは石造りの伝統ですので壁が重要なポイントですが、自然で落ち着いた色調や、窓のデザイン、窓辺の花など、通る人への配慮が感じられます。
屋根や外壁の様式に頼ることができない日本では、新たな町並み形成の手法を見出さなくてはなりません。しかし、長い時間をかけて作り上げてきた伝統をいったん壊してしまったら、なかなか新たなものを手にするのは容易ではありません。
●これからの時代の環境整備
都市の一極集中という状況は、今後も続くことが考えられます。したがって、都会の住宅地は、ますます規模が小さくなり、高度成長期に分譲された住宅地は売りに出されると半分に分割されて売買されます。少子化による住まいの着工件数は少なくなるとしても、低成長期に購入可能な金額となると、やはり敷地面積は小さくならざるを得ないでしょう。もはや、屋根の連なりも壁面の統一性もない、小さな建物が雑多に配列される環境になりかねません。
このような時代にあって、良好な住宅地の環境を整備するには、どのような方法があるでしょうか。
現在、どこの自治体もブロック塀から生垣への改修を推進しており、補助金を出しているところもあります。プロック塀が地震により倒壊し危険だということと、都市のヒートアップの軽減も重要な目的の一つです。
この生垣推進に関連して、常日頃考えているのは、ご近所の連帯です。お隣同士や、一つのブロック内の住民、向こう三軒両隣など、できる範囲のご近所が話し合って、生垣を統一的にデザインするのです。同じ植物の生垣で統一したり、生垣の下部に同じ地被類を追加したり、お隣同士で境界線上にシンボルツリーなどの木を植えたり、何かしら統一感があるようにデザインします。剪定(せんてい)なども同時に行うと経済的効果があるかもしれません。何軒かまとまれば、一軒だけの取り組みよりも格段に豊かな環境となるはずです。地域の連帯も感じられて、防犯対策にもなります。
既に建物ができてしまっている中で、今後のより良い環境を整えることは大変困難ですし、金銭的コストもかかるでしょう。また、高齢化社会の到来で、地域の重要性は増すばかりです。しかし、植栽であれば、休日にご近所総出で取り組んで、現状よりも統一感のある町並みを作り出すことは可能かもしれません。数年もすれば、太陽と雨が植栽を育み、豊かな環境を生み出してくれます。費用もさほどかからず、環境にも防犯にもご近所の連帯にも良い方法なので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
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