MODERN Club/不動産よくある質問Q&A

『日本の食文化と住まい-2』 食卓とだんらん[question]

朝食を食べなかったり一人で夕食をとる子どもが増えている、というニュースをよく耳にします。こうしたニュースを聞いていると、「食」が暮らしの中での変容しつつあるのではないかと思います。しかし、朝食抜きの生活が続いたり、「おふくろの味」がファーストフードの味になってしまっては、健康的な生活は実現できそうにありません。時代の流れと個々の事情もあるでしょうが、食に関する住まいのあり方やキッチン設備もまた、「食べる」をメインに、もっと大胆に本当に守りたいものに向けて改善されても良いのではないでしょうか。

はしとフォーク

子どものころに読んだ記憶がある「はしとフォーク論争」は、どちらが優れた文化であるかを互いに主張する中から、優劣と多様性の区別に言及していました。住まいの問題にもかかわりますので概略をご紹介します。文章は記憶によるもので、正確ではありませんので、意味合いのみ参照ください。

Aさん=欧米人で、自国のナイフとフォークの文化の優位性を主張。
Bさん=日本人で、Aさんの主張に反論。

A:フォークとナイフは銀製などで作られ、代々伝えられていく優れた道具である。それに対して、はしは、単なる日本の棒で竹や木で作られていて粗末である。

B:はしを使う歴史は何千年もある。ナイフやフォークのようにモノを切ったり、突き刺すものより、やさしく持ち上げるはしの方が優れている。

ここで注目したいのは、はしでも食べられる料理とナイフがないと食べられない料理の差です。もちろん、はしを使いこなす訓練や食材の違いはありますが、切り方までこだわり作りこむ和食に対して、欧米の家庭では、まな板は使われないといってもいいほどです。手に持った素材をナイフで手の上で切ったりなど、繊細な切り方はあまりできません。皿とスープ用の深皿で用を足すのと違って、小鉢など多彩な容器にこだわるのが和食です。

しかし、食器にこだわるわりには、食卓周りは調味料や雑多なものが氾らんしがちです。食事の際に炊飯器や味噌汁の鍋は、どこに置かれているでしょうか。白飯はキッチンで茶碗などに取り分けてから食卓に出す、ダイニングテーブルに置く、ワゴンやカウンターの上などいろいろでしょうが、便利さを考えながら、温かいものを楽しく食するためのダイニング周りは、もっと工夫の余地がありそうです。


暖と食とだんらん

昔の日本は、いろりや火鉢で暖をとりました。以前の暖房機能は低く、住まいの断熱性能も悪かったために、必然的に人々は暖房器具の周りに集まって暖を取らざるを得ませんでした。また、いろりや火鉢は、食文化ともまた密接にかかわっています。湯を沸かしたり、餅やいろいろなものを焼いたり、いろりでは、魚を焼いたり、鍋にかけたり、薫製も作られました。さらに、そうした場には自然と家族が集まりますので、料理の作り方や昔話、裁縫やその他さまざまな生活の伝承がなされます。冬の暖房だけでなく、昔の暮らしには快適な場所が季節ごとに限られていたので、自然と家族が一つの場所に集まる傾向がありました。今は高気密工断熱の時代で、どこにいても快適が当たり前となってしまいましたが、いろり端で営まれる暮らしの良さは、受け継いでいきたいものです。

単に暖かさだけでなく、火は人をひきつける不思議な力があります。しかし、現代の気密性の高い現代の住宅の室内で、炭やマキは燃やせません。暖炉も密集地では難しいでしょう。残念ながら「火を囲んで」は難しくなりました。戦後ダイニングキッチンができることで、食事の場と調理の場が近くなり、その後も対面式キッチンやアイランドキッチンなど、コミュニケーション重視の様式が模索されてきました。住まいづくりに主婦の力は絶大で、「食べる楽しみ」、「食文化の伝達」、「居心地の良い場所としてのダイニング」などよりも、どちらかというと「家事の省力化」、「作る便利さ」に目が向いていたように思います。

料理や食事の作法やだんらんなど、日本の食文化の良さのどの部分を大切にし、どの部分は外食や出来合いの食品を利用して効率化するかは、キッチンやダイニングの設計にも影響します。女性の社会進出は、意欲の面からも、生活費の確保の面からもますます増加すると思われます。同時に、世の中はますます便利になっていきます。気がつくと大切なものを失っているということになりかねません。食事は家族や暮らしを考える上で大切な位置を占めます。キッチンや食事の場のあり方は、日本文化の良さを受け継ぎつつ、大胆に我が家流を作っていくと良いでしょう。

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