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『日本の食文化と住まい-4』 茶の間の意味するもの[question]

『日本の食文化と住まい-2』では、料理や食事の作法を中心に考えましたが、今回は少し角度を変え、空間という側面から食卓とだんらんについて考えてみましょう。欧米式の暮らしが浸透するにつれ私たちは、「ダイニング=食事をする場」、「リビング=だんらんしたり、リラックスする場」というように2つの概念に分けて考えるようになりました。たとえ空間的に連続していても、別の用途として区別しているのです。リビングとダイニングに関しては以前にも取り上げてきましたが、今回は伝統的な「茶の間」を題材に食卓とだんらんを見直してみたいと思います。

茶の間とは

もし、「茶の間」とはどのような空間か尋ねられたら、説明に困ってしまいそうです。ダイニングであるとか、リビングであるとか、いやリビングダイニングであるとか考えても、今ひとつピンと来ません。というのも、「間」そのものが説明しにくいものだからです。「間」をルームと考えると「茶の間」は説明できそうもありません。「茶の間」といっても以前は寝室を兼ねるケースも少なくありませんでしたし、「間」とは特定の用途に使われる空間の形や名称ではないようです。「茶の間」が食卓やリビング等を兼ねているのは、単に区分けするスペースの余裕がないからではありません。「間」が生み出す暮らしは、欧米式の個々の部屋や設えに頼る暮らしとは、なにか別個のものがあるようです。


「区切り」と「間」

「間」とは、不思議な言葉です。時間的な事柄にも空間的な事柄にも使います。時間的な「間」とは、単なる空白や休息ではありません。音楽の分野でいうと、西洋音楽は音階も音の長さもきっちり決まっています。音だけでなく休みの長さもしっかり規定され、「音を伸ばす」という意味のフェルマータ記号というのが、唯一時間の規定が明確でなく、演奏者に任されているものであると聞いたことがあります。

その点、日本の音楽は休みのとり方があいまいです。ひとつの音から次の音へ移行する場合も、いきなり飛ぶのではなく徐々に移行したりします。篠笛(しのぶえ)を習ったことがあるのですが、普通♭(フラット記号)は半音低くということを表しますが、ここの部分を3/4下げると良いなどと言われて、最初は何となく居心地が悪かった覚えがあります。しかし、次第に音が徐々に移行し、その時々で音程や休みが微妙に変化するのも、自然で心地良いものだと感じるようになりました。「間合い」ともいいますが、時間の「間」は加減を表しているのだと思います。

空間も同じで、「ルーム」という言葉が表す空間は、用途が明確です。しかし、「間」という言葉に対応するものには明確な区切りがなく、どちらかというと「行為」に対応する言葉ではないかと思います。例えば食事が終わって、「さあだんらんしましょう」といってリビングに移動するかのごとく、普段の生活は明確に区切られるものではありません。何となく食事が終わって、のんびりと食事中の話題をその後も続けて談笑すると考えるのが自然です。

そうした暮らしの中の行為の流れを自然に受け止めているのが、「茶の間」という「間」ではないでしょうか。そもそも日本の家屋はふすまでつながっていて、壁とドアで遮断されたものではありませんでした。日常的には特別な場合以外、開け放して使われることが多かったようです。

社会が急激に変化し、現代は住まいや暮らしのあり方を見直す時期にきています。昨今の事件や報道を見聞きすると親子の断絶が問題視されているようです。それらは家族だんらんの場のあり方や考え方に対して、見直しの必要を示しているのではないでしょうか。子供部屋に関する問題は以前にもご紹介しましたが、今回のテーマに当てはめて考えると、子供部屋を「子供部屋」として、空間的にだけではなく気持ちの上でも切り離してしまったことが問題なのだと思います。


多様化と多目的化

また、今後は住まいに求められる機能も多様化してくると思います。例えば、以前はパソコンのある作業スペースは必要ありませんでしたが、就業方法が多様化し、自宅に書斎や事務所機能が必要になる場合も多くなると思います。機能が多くなれば、そのためのスペースも必要ですので、室内を多機能に利用することが大きな意味を持ってくるでしょう。日本の伝統的な住まいの使われ方から、ひとつの室内を多目的に活用する技を上手に取り入れたいものです。


システマチックにならずに、気持ちの流れに寄り添う「間」の考えの方は、今後も日本人の性に合うのではないでしょうか。「食」と「だんらん」は健全な暮らしに欠かせない重要な要素です。伝統的な「茶の間の」生活の良さを再認識したいものです。同時に、限られたスペースを有効に利用するという面からも、多目的に部屋を利用する日本の文化を見直したいものです。

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