
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
『長屋の暮らしに学ぶ』シリーズも4回目の最終回となりましたが、考えれば考えるほど長屋の暮らしの良さを再認識させられます。今回は、これからの時代に向けて、長屋の暮らしをヒントに、「共に暮らす」ことをテーマとするコレクティブハウジングの可能性について探ってみます。
●社会の変化と新しい暮らし方
日本の高度成長期には、一億層中流というレールに乗れば比較的リスクの少ない暮らしが実現できていたのではないかと思います。しかし、あらゆるものが多様化し、将来像が不確実になってきている時代に、個人や家族だけの取り組みでは、社会の変化に対しては如何ともしがたいものがあります。これからの時代の問題として、よく取り上げられる下記のキーワードを見ても、それがよく分かります。
家族形態の多様化…
核家族・単身世帯・ディンクス(共働きで子供がおらず、高収入・高消費型のライフスタイルを持つ夫婦)・ひとり親世帯・同居世帯など
女性のライフスタイルの変化…
子育て支援・非婚・離婚・ジェンダー概念の変化・多様な就業形態・女性の就業の一般化など
少子高齢化…
介護問題・高齢化による経済的リスク・年金問題など
家族だけで考えると突破口が見出しにくくても、長屋の共同体のように「共に暮らす」ことに注目してみると大いなる可能性を感じます。
●コレクティブハウジングとは
コレクティブハウスは、以前にも「2007年問題-共に暮らす」でご紹介したことがありますが、以下抜粋して再掲しておきます。
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コレクティブハウジングとはその言葉の通り、血縁関係にこだわらずに「共に暮らす」ことのメリットを最大限生かした住まい方です。多くは、食堂・図書室などの共用部分を専用居室の延長として所有し、コモンミール(毎日の夕食を共同でとる)などの特徴を持っています。毎夕食顔見知りの隣人達と食事を共にするコモンミールはひとつの解決策でもあります。コレクティブハウジングは若い世代にも新しい生活スタイルを提供します。共稼ぎで遅くなっても、子供は1人淋しく過ごすことから免れ、共用のリビングや食堂で共に暮らす大人たちとふれあい、隣人達と食事を取ることができます。団塊の世代はこれから高齢化します。次第に食事の用意も億劫になり、1人暮らしになれば、不安でもあります。
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コレクティブハウジングの考え方は、スウェーデン、オランダ、デンマークを中心に20世紀初頭に始まり、スウェーデンでは1930年に、第1号のコレクティブハウジングが作られたとされています。そのプランを見ると、保育園を1階に、2階に小規模の住戸があり、家事サービスと食堂つきの、まさに子育て支援を目的としたものでした。高度の福祉政策と共に、女性の社会進出が進んだスウェーデンならではの当時のニーズであったと思います。
日本では、阪神淡路大震災の際に、公的コレクティブハウジング「ふれあい住宅」として初めて試みられました。大震災という事態は、現代社会が抱える問題点がより顕著に現れます。例えば、一人暮らしの高齢者の自立の問題は、普段はそれほど目立った問題になっていなくても、大震災と共に、一挙に深刻化します。こうした事態が起こると、社会のひずみは、弱い部分から影響を大きく受けてしまいます。
「ふれあい住宅」が、地域全体が深刻な時に、切羽つまった苦肉の策であったのか、自然発生的な流れでできたのかはわかりません。しかし、予想外の非常事態に生み出した解決策は、意外にストレートに社会が内在する諸問題のベストな対処方法を示唆しているのではないかと思います。
これからの時代、江戸時代の長屋のような、家族とは異なった単位で「共に暮らす」スタイルが重要な役割を果たすのではないでしょうか。それがコレクティブハウジングなのか、マンションのコミュニティなのか、それぞれに適したスタイルを作り出すことが重要でしょう。中でもスウェーデンや阪神淡路大震災のときの例のように、子育てと老後を支える暮らしかたとして「コレクティブハウジング」は大きな意味があると思います。
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