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『間の文化-1』 「間」という言葉[question]

「間」という言葉は、日常的にさまざまな形で使われています。住まいに関する言葉として、長さの「1間」という単位は、日本の家屋のモジュールになっているほどです。また、茶の間・床の間と言うように、部屋やスペースも「間」という言葉で表現します。1間の実際の長さについては、江戸間、中京間、京間、団地サイズなどと、細かく取りざたされるくらいですから、1間のモジュールは日本人にとって大変意味があるのだと思います。そこで今回は、日本の住まいと「間」の関係について、考えてみます。

多様な「間」という言葉

「間」という言葉は、そもそもどのような意味を持っているのでしょうか。ここで、『広辞苑 第五版』(岩波書店)による定義を下記にあげてみました。「間」が有する、一つ一つの意味をよく見てみると、日本独自の文化の特徴をかたどる上で、とても重要な言葉という気がしてきます。

特に、音楽、絵画、演劇等において、余白に意味を持たせ、リズムをとることは、おそらく日本人にとって非常に心地よいものなのでしょう。余白は、読み手・聞き手が自由に裁量を加えることのできる瞬間ですから、その人なりの感性に応じて、余白に解釈を書き込むことができます。だからこそ、受け手は作品に対して、共感が増すのかもしれません。住まいに関して考えてみると、現在の日本の住まいは物があふれ、明らかに空間的な余白がありません。住まいにも、もう少し余白がを加えられれば、もっと過ごしやすく心地よい空間が生まれるような気がします。


 『広辞苑 第五版』(岩波書店)による定義

1.物と物、事と事とのあいだ。あい。間隔。
2.長さの単位。
3.家の内部で、屏風・ふすまなどによって仕切られたところ。
4.日本の音楽や踊りで、所期のリズムを生むための休拍や句と句との間隔。転じて、全体のリズム 感。
5.芝居で、余韻を残すために台詞(せりふ)と台詞との間に置く無言の時間。
6.ほどよいころあい。おり。しおどき。機会。めぐりあわせ。
7.その場の様子。ぐあい。ばつ。
8.船の泊まる所。ふながかり。


「間」は、はずせない

「間」がつく言葉を思いつくままにあげてみると、「間が良い」「間が悪い」「間抜け」「間延び」「間を持たす」「間合い」「間を欠く」「間に合わない」…などなど、非常にたくさんでてきます。住まいに関するものとしては、「間取り」「欄間」「茶の間」「床の間」「間戸=窓」「1間」…があります。
かくも、日本人にとって「間」というものは大切で、「間」をはずすことは実に具合の悪いもののようです。この「間」というものに関して、最近ある会話のやり取りをしていて気がついた事があります。学問的な解釈は別として、「間」と住まいのかかわりについて、私見的な解釈を試みてみたいと思います。


日常と非日常

「間」とは、受け手が自由に考えたり判断したりする余地を与えたり、次の展開へ進むための緩衝地帯であったりと、いろいろな役割があります。例えば、長谷川等伯の「松林図」(国宝 東京国立博物館蔵)、6曲1双の屏風は、かなりの部分が空白かそれに近い表現で占められています。絵画は描かれているから絵画であり、それが普通(=日常)で、描かれていない部分は普通でない(=非日常で)す。人々はこの絵の空白部分を見て、松林が遠くまでずっと続いているような、その人なりの風景を描かれていた場合以上に豊かに想像することができるからです。描かれている松と描かれていないものとの間を行ったりきたりしながら、絵画を味わう醍醐味を堪能するのです。

実は、最近この日常と非日常を上手に行き来し、コントロールすることは、非常に重要なことなのではないかと思っています。日常だけに追われて余裕がない状態や、日常と非日常の区別がつかなくなったり、非日常が日常になったりでは、決して心地よい毎日をすごせそうもありません。人々は日々ちょっとした工夫を積み重ねながら、この日常と非日常を上手にコントールしながら生活しているのだといえるでしょう。

こうして改めて考えてみると、「間」とは、日常と非日常を行き来するのに重要な役割を果たしているのではないでしょうか。住まいは多くの時間を過ごす場所でもあり、日常と非日常を上手にコントールしながら生活する上で、非常に重要な要素です。住まいは日常を快適に過ごしていくために設計され工夫されますが、「間」をとる非日常を取り入れることも非常に大切なように思います。書き込み自在の余白があること、非日常を上手に取り入れる工夫があることなど、「間」の感覚と住まいの余白、非日常の演出などについて見直してみる価値がありそうです。

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