MODERN Club/不動産よくある質問Q&A

『間の文化-3』 開口部の文化

以前、「日本の窓とは間戸である」ということをお話したことがあると思います。この場合の「間」は、柱と柱の間(あいだ)のことを指し、そこに壁ではなく、扉があるからこそ「間戸」となるわけです。住まいは、ある意味、外部から家族や財産を守るシェルターの役割を持っています。そこに開口部を取り付けるかどうか、またどのような開口部とするかは、かなり重要な問題です。日本人に根ざした開口部のイメージと、生活やスタイルの社会の変化について考えてみましょう。

“window”と「間戸」
“window”を辞書で調べると、“an opening in a wall or roof”とあります。つまり、英語にとっての「窓」の概念は「開ける」という意味になります。石造りのヨーロッパの建築は当然壁が最初にあり、壁が主要な構造体になっています。その構造体に対して、採光と通風のための最小限の開口部を開けるのが“window”です。一方、日本では柱が主要構造体になっており、柱と柱の間に戸を付加する役割を担うのが間戸(=窓)なのです。小さな開口部となっている“window”や、柱と柱の間の広い空間である「間戸」は、外観やインテリアのデザインが工夫され、その国の気候風土に合わせた伝統的意匠となっています。日本の住まいも、環境の変化と共に洋風へと変化していますが、同じ開口部でも、もともと成り立ちの全く異なるものに対して、そのままヨーロッパのデザインやスタイルを持ち込んでも、機能的でないばかりか見た目の上でも美しくありません。


開口部のスタイルと窓の文化

腰高窓と掃き出しサッシ
日本人はなぜ掃き出しサッシにこだわるのでしょうか。住まいを設計していると、日本人はとにかく床まで開いている掃き出しサッシにこだわります。確かに、庭と一体感が感じられ、空間が広々として見えるばかりか、四季の変化も楽しめます。大きな開口部はさわやかな風を運び、高温多湿の日本の夏をしのぎやすくします。まさに「日本の住まいは、夏を旨とすべし」の通りです。また、日本人は半戸外のスペースやそこでの生活の営みを大切にしてきました。何となく解放感もあり、室内が明るくなる気もします。

しかし、新築の住まいで、夏にエアコンなしで過ごす家庭がどの程度あるでしょう。掃き出しにしなくても掃除は掃除機で吸い取る方式です。窓を閉め切ってレースのカーテンを閉めての生活でなお、掃き出しにしたいのは何故でしょうか。明るいだろうと思っている節もありますが、明るさに関しては掃き出しサッシがいつも明るいとはいえません。明るさは、床面の開口ではなく、部屋の天井やそれに近い部分の方が有効なのです。コンクリートの建物は通常、上の階の床を支えるために太い梁を下げます。サッシはその下に取り付けるのが一般的ですが、最近のマンションは天井から梁を下げずに、床から梁を立ち上げて(逆梁という)天井から近い部分にサッシを取り付けるケースも見られます。必然的に梁がつきますので、腰高窓となりますが、格段に室内の明るさは増します。

現代の日本の暮らしは、家具が少ないとはいえません。腰高窓は低い家具やソファーなどを窓に接して置けますが、掃き出しにすると、サッシの廻りにモノを置くことはできず、家具の配置はその分制約されます。またスペースも余計に必要です。

引戸と開き戸
日本では建具は引戸形式でした。生活スタイルの洋風化と共に窓以外はドアが多くなりましたが、最近はマンションでも引き戸が見直されつつあります。この引戸ほど間戸の意味に近いものはありません。「間」全体に開口部を大きくとりたい時に、ドアでは機構的に困難です。最近はフルオープンのサッシも開発されていますが、今も引き違いが主流です。逆に巾の狭いところでの引戸は、縦横比率がアンバランスになり、機能的ではありません。

障子とカーテン
障子やカーテン、ブラインドなどは、直射日光を避けたり、目隠しの役目を果たしたりします。本来日本人が好む間戸、つまり目一杯大きくあけた開口部と目隠しや直射日光を遮りたい要望は相反するものですが、それを日本人は障子で上手に工夫してきました。障子は風を通しませんが、風を通したい夏場は、障子をよしず戸に替えたりしていました。そこまでしなくても軒先に簾をかけたりして、陽射しと目隠しと通風をうまく工夫していたのです。カーテンは石造りの小さな窓にはアクセントとして美しいかも知れませんが、幅広の開口部についているカーテンは、壁よりカーテンの面積がはるかに多くなり、締りがありません。また、日本の戸建住宅の居室には、多くは雨戸やシャッターが設置されます。夜雨戸を閉めるとすると、ドレープカーテンの意味がさほどなくなります。


私たちは、欧米の様式を表面的に取り入れるだけでなく、日本の伝統的設えを再認識し、そろそろ現在の暮らしに最適なスタイルを整理する時期にあると思います。防犯も重要になった、エアコンなしの生活には戻れない、でも省エネも必須である、だから節電のために明るく風通しをよくする必要がある、畳の暮らしには戻れないが、半戸外の暮らしも大切にしたい・・・このようなさまざまな要望に関して、開口部は重要な意味を持ちます。住まいを考える時は、間取りに主眼が行きがちですが、開口部で暮らしを考える、そんな視点も必要ではないかと思います。

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