
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
前回までのコラム「間の文化」で述べたように、「間」という言葉と建具とは密接な関係にあるようです。繰り返しになりますが、柱と柱の「間(あいだ)」に戸があるのが「間戸」=窓とも言われ、建具のあり方は日本の住まいのスタイルを端的に表現しています。そこで今回は、日本の文化と住まいの関係について復習しながら、建具について考えていきましょう。
●ドアと引き戸
窓やドアといった部分は、明かり取りや出入り口のため、大切な構造体である壁をくりぬいて開口部を確保する以上、その開口部は必要最低限のものとしなければなりません。従ってヨーロッパの石造りの建物の外観は、壁に小さな窓がいくつも開いていて、その窓廻りのデザインに趣向を凝らしていました。出入り口も開口部全体が有効に活用できるドア形式です。それに対して、そもそも元から開いていたスペースを建具や壁でふさぐという発想の日本の建築様式は、雨の多い気候も影響して、できるだけ大きな開口部を取り、風通しを良くしようとします。雨から建物を守る屋根の美しさで建物を表現したり、連格子などの開口部とその付属物で表現したりしてきたのです。
ドアは小さな開口部があるだけで出入り口の機能を果たすことができますが、引き戸は原則引き違い戸なので、その2倍の開口部が必要です。逆に、柱と柱の「間(あいだ)」が広いと、ドアでは不適切です。引き戸は間口の広い開口部に適していているのです。特に日本の建具は原則取り外し可能ですので、外してしまえば、隔てられていた二つの空間は、たちまち一体化します。開口部の材質の主流が木製からアルミサッシへと移行してからも、日本人の開け放しニーズは高く、折り戸式のフルオープンのアルミサッシも開発されているくらいです。戸を全て戸袋(とぶくろ)に収納し、引き込み庭と一体化したいような場合は、今でも木製の建具が多く使われます。また引き戸は、開閉のためのスペースを必要としない、という大きな利点があります。車椅子ではドアの開閉は難しいので、高齢者用の住宅には引き戸が使われています。最近では、マンションでもその利点が見直され、引き戸が使われ始めています。
収納の扉についても機能に違いがあります。引き戸は狭い部屋の収納扉にも便利で、地震にも外れにくいという特徴があります。しかし、押入れを例にして考えてみると、引き違いの場合は、中央部分の建具が重なっているところは取り出しにくい構造です。間口が広い場合は3本レールの3枚戸として、取り出しの死角がないように工夫すると良いでしょう。収納は両開きか折り戸として、全体が全て見渡せると快適です。耐震ラッチ(地震などの揺れで収納の扉が開かないようにする金具のこと)などの防災グッズでモノが飛び出さないように工夫することを忘れないでください。
●建具あれこれ
ドアと引き戸といった区別のほかに、材質の違いや機能の違いには、いろいろな種類があります。代表的なものについては、次回以降で詳しく述べるとして、どのような種類があるのか簡単に紹介しておきます。
框戸(かまちど)⇔フラッシュ戸
…框(かまち)とは無垢(むく)材の枠、フレームのことです。一方フラッシュとは、扉の骨組みを見せずに全体に表面材を張ったもの。最近のドアや引き戸は、ほとんどがフラッシュ戸ですが、無垢(むく)材を使った高級ドアは框(かまち)を見せたデザインになっています。
格子戸
…框戸(かまちど)でガラスを入れる場合は、補強のために桟(さん)を格子上に組みます。必ずしもガラスでなくても薄い板をはめ込む場合もあります。格子の組み方が日本の建具の重要なデザイン要素となっています。
ガラス戸
…框戸(かまちど)にガラスを入れたもので、ガラスの厚みによっては補強の桟(さん)を入れます。また、フラッシュ戸にガラスを入れる場合もあります。
襖(ふすま)…次回に特集します。
障子…障子は明かりを取り入れて、視線だけ遮る優れものです。詳しくは次回以降に特集します。
雨戸…第4回に詳細特集予定です。
蔀戸(しとみ)…上部に跳ね上げる形式の扉です。寺院などで見かけることもあると思います。
鎧戸(よろいど)・ガラリ戸…通風を兼ねた扉で雨戸や水廻り、収納などに利用されます。
葦戸(よしど)
…夏障子と呼ばれるもので、いわゆる簾(すだれ)やヨシズを枠にはめ込んで、夏の日差しを遮るものです。
建具の性能は大きく進歩し、特に防犯や断熱・気密に関する性能が重要となっています。勢い、既成のアルミサッシが、しばしば利用されています。日本の伝統的建具のデザインを生かせないのは残念ですが、引き戸のよさが見直されたり、和紙を通した光の心地よさが見直されたりもしつつあります。また、内部の建具に関しては収納の扉や間仕切りは、伝統的建具の良さを生かす余地はあると思います。
同時に、次第に個室化された住まいに対する問題点も指摘されています。建具によって、部屋をフレキシブルに活用してきた日本の伝統的住まいの中に、何かヒントがあるのではないでしょうか。
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