
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
現在の新築マンションでは、和室の部屋をほとんど見かけなくなったように思います。戸建ての場合、坪数に余裕がある場合は、客間や予備室として和室を作るケースがありそうです。しかし、畳が敷いてあっても、その他の部分は洋風である場合も少なくありません。
和室は、リビングに隣接して設けられ、一室として開放的に使われることが多いため、全体のインテリアのバランス上、洋風のリビングと極端に違うデザインとなるのも違和感があります。今回は、和室の造作の部位とそれにまつわるエピソードをご紹介していきます。
●和室のパーツの名称
◇敷居と鴨居…
敷居は日本の作法では踏んではいけない部分です。しかし、それでも人が触れ得る場所ですので、柔らかい木材で作られます。柔らかい木材は、襖(ふすま)を開閉するときの摩擦で溝が磨り減っていきます。従って溝の底には、固い材質の木材を埋めて補強します。寺などの古い建物を見学したときは、敷居がどのようになっているか、観察すると楽しいです。鴨居は上部にある溝加工した部材です。
◇長押(なげし)…
長押は本来、柱と柱をつないで構造を補強するものでしたが、現在は鴨居などの上にかぶせるように取り付けて、全体の雰囲気を引き締めるために使われます。下の写真のように、欄間があるときは、欄間と襖の間に補強の構造材が必要です。また、構造材を隠す意味もあります。
◇柱…
木材は、樹木が以前立っていたときのように、配置します。従って、柱には上下があり、現在は強度のある集成材の柱も多く使われますが、表面に張られている薄い化粧材も、無垢の木材と同様に上下を考えて張られています。上下だけでなく、柾目(まさめ:木の芯に向ってカットされた面でまっすぐの木目)と板目(柾目と直角方向にカットされた面で、いわゆる木目面)を考えて張られているのです。隣の面は本来の木材と同様に自然につながっていないといけません。集成材であれば、性能に影響はありませんが、たまに上下間違って使用している場合などもありますので観察してみるといいでしょう。
◇廻り縁…
天井と壁が取り合う部分にあり、隙間を防いでいる部材です。畳と壁との間にあるものを畳寄せといいます。
【広間】

●和室の付属スペース
◇押入…
北陸に建物見学に行ったときに、壁一面2間分の襖があったので、大きな押入だと思ったら仏間でした。奥行半間なので、襖の仏間側は見えませんが、仏間なのでしっかりと襖紙を張ります。押入側の内側の場合は簡易な和紙張りとなります。
◇地袋・天袋…
地袋は【広間】にあるように、違い棚の下などにある高さの低い収納のことです。天袋は押入のさらに上に作る収納のことです。違い棚の上に取り付ける薄い収納も天袋という場合もあります。
◇書院・違い棚…
床の間の脇にある、あかり取りの腰高障子のことをいいます。出窓のようになっていますが、いろいろなタイプの書院があります。
◇縁側…
【和室】の写真にあるように、座敷と庭の間にある緩衝地帯のようなスペースです。多くは廊下としての役割を兼ねています。
◇床の間…
床の間やそれを構成する部位には、ここでは説明しきれないほど、数多くのスタイルがあります。【和室】の写真にある床の間は、薄縁床(=畳のように縁加工したゴザのようなものが敷かれた床の間)のように見えます。注目して欲しいのは矢印の部分です。畳の長さが1.5倍あるように見えます。これは「床挿し(刺し)」を嫌うために、特別な畳を作っているものです。
床挿しとは、畳の縁や天井の竿(さお)や天井板の溝が床の間に向って、床の間を突き刺すようになっている状態のことをいいます。床の間の幅が1間を超える場合は、特注の畳を作らない限り、畳が床を刺してしまいます。また、写真には床框が表示されていますが、その上部にあるのが「落し掛け」です。鴨居や長押より少し上の位置にあるために写っていません。
【和室】

写真は、東京の駒場公園の中にある和館の室内です。写真上だけでの解説ですので、実際は違う部分もあるかもしれませんが、都内にありますので、休みの日にでも散策して実際に見てみると楽しいのではと思います。出展は下記のURLです。ご参照ください。
http://www.city.meguro.tokyo.jp/kurashi/sports_koen_yoka/koen/omoshiro/komaba/index.html
江戸時代、商家は、ぜいたくを禁止され、床の間などを作ると、とがめられることもあったようです。いざとなったら蔵などに隠してしまえるよう、「置き床の間」なるものを見学したことがあります。古い民家や神社仏閣などを見学した時は、建物の部位も注目するのもおすすめです。
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