
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
建具の文化シリーズも、今回で最終回です。
建具のあり方が、住まいの形式や暮らし方に大きく関係していることをお分かりいただけたのではと思います。襖(ふすま)や障子などに囲まれた以前の住まいを振り返ってみると、現代の住まいは不必要に重装備になっている部分があるようです。
最終回は、雨戸と建具金物を通じて「建具の機能」について、再度考えてみたいと思います。
●雨戸
以前、外部の建具は、雨仕舞(あまじまい)の性能も充分ではありませんでした。雨の多い日本では、たとえ庇(ひさし)を深くしても、台風の時など雨戸がないと心もとなかったはずです。もっとさかのぼれば、庭に面した廊下には建具そのものもなく、内側の座敷との間の障子のみという場合もありました。普段しまっておいたとしても雨戸は必需品だったでしょう。
現在は金属製の雨戸やシャッターが一般的ですが、その機能となると少しあいまいになっているのではないでしょうか。雨戸というからには、雨を防ぐものだったでしょうが、現在のアルミサッシの防水機能とは比べ物になりません。アルミサッシの機能は、かなり優れていて、雨戸がなくては絶対に困るというものではありません。
最近ではペアガラス(二重ガラス、複層ガラス)も普及し、首都圏では断熱の機能についても雨戸が必需品ではないようです。遮光に関しても、専用のカーテンがありますし、防犯機能にいたってはハンマーでたたいても割れないガラス用のフィルムが開発されています。ホームセキュリティのセンサーも組み込むことができるようになった現在、終日雨戸を閉め切っていたほうが留守を表明しているようで物騒でしょう。また、開口部をできるだけ大きくとりますので、雨戸は何枚も開ける必要があり、シャッターは電動としなければ重過ぎる場合もあります。
今回のシリーズで一度、日本の住まいの開口部とカーテンの組み合わせの是非について述べましたが、今後、開口部に関してはまだ改良の余地がありそうです。毎日開け閉めする手間を考えて、少し開口部まわりの機能を整理しても良いのではないかと思います。開口部のサイズや防犯、断熱、雨仕舞いなど、いろいろな機能をサッシに極力一元化すると、ぐんと使い勝手が良くなりそうです。まさにこれからは、暮らし方に最適な開口部の組み合わせを考えていきたいものです。
●建具と建具金具
生活が洋風化してからの住まいの建具はドアになり、そのドアにはドアノブが取り付けられました。最近はドアノブから高齢者でも操作のしやすいレバーハンドルが使われるようになりました。これらの建具金具は操作することによってラッチ(留め金)が飛び出して開閉できるようになっています。
しかし、私はこのラッチが本当に必要なのか、少し疑問を感じています。ドア部分は、毎日使う部分ですので壊れてドアが開かなくなることもあるでしょう。一人暮らしのお年寄りが、万が一、トイレ内にいるときに壊れたらと考えると、このような金具には不安が残ります。ドアはこのラッチがなくてもきちっと閉まり、引き手だけで充分です。鍵が必要な部屋は鍵だけを追加すれば足ります。外部ドアなどは防犯など万全を図る必要がありますが、内部に関しては、もっとシンプルに考えても良いのではないでしょうか。もともと日本の建具は引戸が主流でしたので、金具はほとんどありませんでした。ドアの場合も昔はラッチがなく、引き手だけで足りていたのです。
ドアノブ等のラッチは「ドアをよりしっかり閉める」という意識の元に作られています。しかし、住まいの内部の扉で、この機能がそれほど必要でしょうか。特に全体の性能が高気密高断熱になれば、内部は何処も一定の温度に保たれます。むしろ襖(ふすま)や障子の間仕切りでも事足りるようになっているともいえます。
●最後に
日本の伝統的建具の良さは、取り外して大きな空間が作れるなどの他に、「気配」を感じられることにあると思います。例えば外部の気配・・・サッシを開け放して、障子だけを閉めている状況をイメージしてみてください。障子越しの陽射しを通して、鳥の声や虫の音、木々のざわめきなど、四季折々の外部の気配を感じことができます。襖越しであれば、家族の様子もうかがい知ることができます。
しかしながら、近年の住まいは閉鎖的な個室造りの傾向にあり、住宅展示場で、あえて2階で飛び跳ねて階下への音の伝達具合を確かめる家族もあるくらいです。主寝室はともかく、1つ家族が住む住まいで、音を隔離していく方向は疑問が生じます。音は家族の情報を伝えてくれますし、大きな音を出さないなど家族を思いやるしつけも大切でしょう。
日本の住まいは、広さや機能面、性能面では一定の基準に達しました。冒頭にあるように建具のあり方が住まいの形式や暮らし方に大きく左右します。また、従来建具は豊かな表情がありました。日本の風土や暮らしに合った建具を再度考え直したいものです。
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