
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
今回は、『町家づくりに学ぶ』シリーズの最終回です。
長く培われた暮らしのスタイルやそれに基づいた住まいの形は、現代の私たちも学ぶべき良さをいろいろ持っているもの。
町家の暮らしの精神を現代の暮らしにどう生かしていくか…。 脈々と受け継いだ洗練された造形だけでなく、造形に込められた知恵を生かすためにはどうすればよいでしょうか。
●和モダンとは
和モダンとは、和風の素材やデザインを、現代の暮らしにあわせモダンな感覚の中に取り入れてアレンジしたものです。一般的には、シンプルでナチュラルな色合いのインテリアが多いですが、昔ながらの漆の赤や黒の色合いを生かしたものもあります。
戦後欧米の文化に憧れた時代も遠ざかり、生まれたときからマンションなどで生活してきて、和室や和の素材・造作を知らない世代が住まいの購入層に達し、和風=古臭いといったイメージではなく、新鮮な目で「和」の良さを発見し始めたのではないでしょうか。
●見直される「和」の素材と造作
和のデザインは、長い年月をかけて日本人の手によって洗練され続けて、心地良いものに作り上げられていったものです。身体のモデュールに合わせた尺や坪のサイズも欧米にはない非常に合理的なものです。また、障子、白木、竹などの自然の素材による造作は、それだけで心安らぐものがあります。イグサの香りや、さわやかな感触は捨てがたいもので、日本の気候に合わせて夏はさわやかで冬も冷たくありません。
和紙・畳・漆喰(しっくい)などの和の素材は、いずれも調湿機能があり、高温多湿の日本の夏の気候に適しています。肌触りもソフトで、ナチュラルな色合いは心を休めます。和紙を通した光は、やさしく目に届きます。一時流行したカーペットからフローリングへと床材が変化しましたが、さらに和の素材の良さが見直されつつあるようです。
素材だけでなく、引戸や障子の優れた機能への再認識もされつつあります。引戸は開け閉めのスペースを必要とせず、また大きく開け放して2つの部屋をつなげることもできます。障子は柔らかな光を室内に届け、視線を遮断しながらも、写りこむ木々の影で外を感じることができるのです。まさに気配を大切にする町家の暮らしの知恵ですね。
●形の回帰から、暮らしの回帰へ
和のデザインや素材を現在の暮らしに応用することも非常に意義があると思いますが、今まで「格子」や「箱階段」で考えた、暮らしに対する優れた機能も応用したいものです。
写真は、格子をアレンジしたものです。

機能よりもデザインの要素が強いですが、気配を維持しながら空間を区切るには、非常に便利なやり方です。手前に、ちょっとした書斎やパソコンコーナーなどを配置すれば、同じ部屋であっても団らんと勉強のスペースを格子がさりげなく区切ってくれます。
さらに、別の例として、下の写真は主寝室を和モダンにしたものです。

(筆者撮影)
ベッドは、室内の端から端までスライドできるので、空間を多様に活用できるようになっています。

(筆者撮影)
また、サッシ部分にはカーテンではなく障子をセットしています。和モダンならではの仕様になっており、3枚の大きな障子は全て壁に引き込むことが可能です。障子をサイドの壁に引き込むと、全面ガラス面になり、収納の扉も和風のクロス張り。ベッドのマットはセッティングされていませんが、布団を使用することもできるので、重宝しそうです。
さらに、和の文化を現代に生かす和モダンは、エコの広がりも影響しています。日本の気候風土にマッチした素材や暮らしが再認識され、これからのリビングのあり方は大きく変化していくのではないでしょうか。
特に最近では、単にソファーセットやTV・ピアノ・サイドボードなどを置き、物に頼った団らんを設えるのではなく、パソコンや事務スペース、大人のためのスタディルームといった要素も組み込まれるようになってきました。
多様な用途に応じる空間が必要とされるようになり、今後はさらに、家族が別々のことをしながらも、団らんできる空間が大切になってくると思っています。引戸や格子・和紙のロールスクリーンなどで、さりげなくお互いを気づかうような、そんな繋がりを大切にしたいものです。
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