
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
屋上の利用は、本来使われなかったスペースを有効利用できるほか、断熱効果や温暖化防止効果も期待でき、良いことばかりのように思えます。しかし、屋上を利用するには気をつけなければならないポイントがあります。これからお伝えする点に十分配慮しながら、屋上の利用を考えていきましょう。
◇荷重について
建物の構造設計は、まず建物の重さと載せるものの重さを考えて設計します。また、雪が降ったときの雪の重さなども、事前に計算しておきます。そして、屋根面の床の厚みや構成を割り出し、それを支える梁や柱の太さなどを決めていきます。
屋根の重さが変わると、それ以下の階の設計にも影響します。屋上に、勝手に当初の設定以上の重いものを載せてしまうと、屋上だけでなく建物すべてが荷重オーバーになってしまうため、注意が必要です。
したがって、屋上で植物を育てる場合、利用する土は、専用の極力軽いものを使い、あまり厚みが出ないようにします。植物も深く根を張らないものを吟味しましょう。
新築時に屋上利用がわかっていれば、相応の荷重を見込んで設計できますが、あまり重く設定すると、建物全体の構造体に影響しますので、その分構造資材のコストが増してしまいます。リフォームして屋上を利用したいときは、今ある構造体が屋上利用に十分に対応できるかをしっかりチェックしなければなりません。
◇防水について
屋根は雨を防ぐ主要な部位として、新築住宅では10年間の瑕疵(かし)担保責任[*1]が規定されています。平らな屋上であっても、実際は緩やかな勾配が設定されていて、速やかに排水溝や排水ドレインに雨水を誘導できるようになっています。うっかりそのルートをふさいでしまうと、そこに水がたまり、のちに浸水の原因になることがあります。
また屋上の防水シートは、多少水や雪がたまっても水が浸入しないように、所定の立ち上がりがあります。しかし、防水シートの立ち上がりラインより上に土を盛って、植物に水やりをしたらどうなってしまうでしょうか。たちまち防水シートの内側に水が浸透してしまう危険があります。
排水ドレインは、落ち葉などで塞がれないように形状に工夫がされていますが、それでも定期的な清掃が必要です。まして、屋上で植物を育てるとなるとなおさらです。
建物の外部のデザインや収まり部分のディテールは、雨水が建物に侵入しないような作り(雨仕舞い)を考えて、工夫されています。水をコントロールすることはそう簡単ではないのです。
◇維持管理について
維持管理のメインは、上記の荷重の問題と、雨仕舞いや排水の管理です。それ以外にも、強い風にとばされないよう、ものの固定や収納も重要なポイントです。そのほか、あらかじめ設計士と相談して、手すりなどが腐食していて危険ではないかなど、日々の点検・管理のポイントをリストにまとめておくとよいでしょう。
◇屋上緑化の助成金について
コンクリートブロック塀の倒壊の危険や都市の緑化推進のために、生け垣を普及させようとする運動が盛んになりました。多くの市町村がそのための助成を行なっています。より都心部では、3階建て以上の住まいや陸屋根の建物も多くなり、屋上緑化についても助成しているところがあります。区市町村などのホームページを確認するか、直接問い合わせてみましょう。草花を無償で配布しているところもあり、助成の条件となる植物の種類なども設定されている場合があります。
屋上緑化や屋上利用は、しっかりした設計士の指導のもとに行なうべきでしょう。特に荷重や雨仕舞いの問題は、即、建物の性能や耐久性に影響します。建てた後も、当初の設定の範囲を超えないように維持管理していくことが大切で、排水等のメンテナンスも重要です。
日本人は住まいのメンテナンスを、自分ではあまり行なわない傾向にあると思います。しかし、屋上を利用する以上、日々の管理はとても大切です。設計士と維持管理の方法についてしっかり打ち合わせしておくことが重要です。
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[*1] 瑕疵担保責任
売買契約の目的物(宅地、建物など)に、契約の締結当時にすでに欠陥・キズがあった場合、
売主が買主に対して負う責任のこと。
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