
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
冬暖かく住まうためには、暖房器具が欠かせません。暖房を選ぶ時は、暖める機能のほかに、快適性や健康面、安全面も考慮しなくてはなりません。昔の住まいは機密性も断熱性も低く、暖房をつけている部屋から廊下へ出ると一気に冷えてしまっていました。特にトイレや脱衣室など肌を露出する場所で、急激な温度差によって脳卒中が引き起こされるケースは、今でも少なくありません。高齢者の家庭内事故は、とても多いのです。
今は住まいの性能も良くなりましたが、暖房器具の適材適所の配置が重要なことに変わりありません。しかし、暖房の選択は地域によってまったく異なりますので、今回は首都圏エリアを対象に、暖房器具の選び方について考えてみましょう。
◇暖房方式の種類
【1】直接式と間接式
暖房は大きく分けると、直接ガスや石油を燃焼して空気を暖めるものと、水やオイルなどの媒介となるものを通して空気を暖めるものがあります。効率的なのは当然ながら直接暖める方式ですが、安全面や快適性などを加味して考える必要があります。
【2】対流式と輻射式
エアコンやファンヒーターなど、ファンによって暖かい風を吹きだす「対流式」と、床暖房やオイルヒーターのように熱を放射する「輻射式」があります。対流式はすばやく部屋を暖めることができますが、ホコリを舞い上げたり空気を乾燥させたりします。
また、風は意外に身体にストレスを与えます。断熱性・機密性の低い住まいの場合は、ファンも強力なものが必要となり、そのぶん知らずにストレスを受けていることになります。その点、輻射式は心身に優しい暖房といえますが、温まるのに時間がかかりますので、対流式と上手に組み合わせると良いでしょう。
【3】全体暖房と局所暖房
昔は、火鉢1つが暖房の全てというのが当たり前でした。室内も多少温まりはしますが、「手焙り」という別名の通り、まさに近くに寄って、身体だけを暖める局所暖房だったと言えるでしょう。
住まいの性能が高気密・高断熱になり、全館空調になると局所暖房の必要性は薄れていきます。しかし、高齢者のそばなど高めの温度設定が必要な場合や、肌を露出する場所では、局所暖房を上手に活用すると良いでしょう。
◇暖房器具の種類
★エアコン
最もポピュラーな、ヒートポンプ式の暖房器具です。ヒートポンプ式の特徴として、冬場の外気温が下がりすぎる地域では使用できないという難点がありましたが、技術の向上で幅広く利用できるようになりました。エアコンは、ファンをまわして暖めますが、全館空調用のものは穏やかな風のものも開発されています。
★ファンヒーター
ガスや石油を熱源とする暖房は、エアコンが普及する以前、大活躍しました。すぐに暖かくなるという利点のほか、最近のものは吹き出し口が床近くにありますので、足元まで暖かく、快適に過ごすことができます。
★床暖房
床暖房の最大の特徴は、足元から暖かくして室内を均一な温度に暖めることができる点です。空気も汚さず、気流も発生させない、まさに理想的な暖房です。ただし、温まるのに時間がかかりますので、エアコンと併用し、使い分けるのが一般的です。
★ストーブ・暖炉
暖房としては最も効率的で、すぐに温まるのが特徴です。しかし、室内の酸素を使って燃焼するため、排気ガスによる空気の汚れが生じます。このため、換気に気を配ることが重要です。また、燃料の補給の手間や転倒による火災の危険もあります。しかし直接燃えている火を眺める癒し効果には、捨てがたいものがあります。
★こたつ・ホットカーペット・あんか
こたつはまさに“頭寒足熱”。根強い人気で、洋風の住まいにも取り入れられています。また、ホットカーペットは設備投資が必要な床暖房に比べて、手軽に取り入れることができます。
★FF式暖房機
壁際に設置し、丸い二重の筒を外に出して、給気と排気を同時に行うものです。外気を取り入れて燃焼させ、外部に排気しますので空気を汚しません。
★その他のヒーター
オイルを電気で温めるオイルヒーターは安全で清潔で輻射熱で心地よく暖めます。最近人気のセラミックヒーターは、セラミックに発熱体を焼き付けて温めるものです。その他、赤外線ランプの熱を反射される輻射熱のハロゲンヒーターや、遠赤外線効果で体の芯まで暖めるカーボンヒーターなどがあります。
◇暖房器具の選び方
それでは暖房器具を選択する上で、暮らしの中でどのようなシーン・ニーズがあり、それぞれどのような暖房が適しているのでしょうか。
<用途別選択>
広い部屋を暖めたい・部分的に暖めたい・すぐに暖かくしたい…など、まず目的をしっかり把握しましょう。それぞれのニーズに最適な暖房器具は、上記の暖房器具の種類をご参照ください。
<快適な暖房にしたい>
「頭寒足熱」、「部屋全体・家全体の温度を均一にする」、「気流を発生しない」、「空気を汚さない」、この4つが快適さのポイントです。どれを最優先するかを考えて選択しましょう。
<安全面を考えた選択>
高齢者や子供、ペットの安全のためには、石油ストーブやガスストーブなど、直接火を燃やすもの、器具が熱を帯びるもの、転倒の危険のあるものは、極力避けたいものです。
また、湯たんぽやあんかは低温やけどの危険もありますので、寝る前に布団を十分に暖めておいて、寝るときには外すなどの注意が必要です。
<空気をきれいに保ちたい>
電気を使う暖房、温水やオイルを媒介にするものは空気を汚しません。また、石油やガスを燃焼する暖房もFF式の場合は直接室内の空気を使わず排気も外に出すので空気を汚しません。乾燥やホコリの舞い上がりなどにも配慮すると、床暖房が最適です。
ムダのない効率的な暖房は、やはり適材適所と組み合わせの妙ということになります。省エネや経済面も考えながら、上手に暖房器具を取り入れたいものです。
次回は、暖房費の節約についてまとめてみます。
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