
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
収納することを、「しまう」「といいます。漢字では“仕舞う”と書きますが、この言葉ひとつで、収納のあり方を言い表しているといってよいと思うほど、とても美しく含蓄のある言葉です。
美しく“仕舞う”とは、見た目に美しいということだけではなく、使いやすく便利で、過度な労力を必要とせず、ストレスなく自然に楽しく整理整頓ができるということだと思います。せっかく日本人はこの美しい言葉を持っているのですから、そんな収納をめざしてみたいものです。
今回は、暮らしがもっと快適になる収納の考え方についてお話しします。
◆モノの吟味
戦後、日本人はゼロから生活をスタートしました。ヨーロッパのように築何百年も経過している建物に住み、親から子へと伝来の家具に囲まれて生活できたわけではありません。急速な欧米化や都市化など環境の変化の中で、その都度生活に必要なものをあつらえてきた結果、モノがあふれた非常にバランスの悪い状況に陥ってしまっているのが、多くの日本人だと思います。
しかし、美しくしまうには、これから購入するものの吟味と、不必要なものの思い切った整理が不可欠です。「美しくしまう」ための第一歩は、先々まで考えて不要なものを処分し、なるべくモノを増やさないということではないでしょうか。
◆収納スペースは長く浅く
良い収納のポイントは、棚や引き出しなどの内部の造作でも広さでもなく、「長さ」です。最近は納戸やウォークインクローゼットがついた物件が人気のようですが、実際の収納としての使い勝手は、決してよくはありません。
部屋や廊下などを、「居住や通行のスペース」と、「出し入れのための作業スペース」と共有すれば、ムダなスペースが発生しません。居室は壁の余白も必要ですし、家具も置かなくてはならず、窓もあるので、長く浅い収納スペースがとりづらいかもしれません。廊下がある間取りなら、廊下に面した収納を多くとると、格段に使いやすい収納となります。
◆使うところに収納
☆洗面脱衣室にあると便利なもの
たとえば、下着はどこにしまってあるでしょうか。多くは家族の個室だと思います。でも、着替えるのは洗面脱衣室がほとんどではありませんか?そして、洗濯機が置いてあるのも脱衣室が多いと思います。
もし、脱衣室に家族のそれぞれの下着の収納スペースがあったなら、洗濯乾燥機で乾かした下着をその場でしまって、入浴後はその場で取り出して新しいものを身にまとうことができる…と考えると、全ての動作にムダがありません。
シーツやタオル・救急箱・身だしなみの道具、場合によっては化粧道具や装飾品など、洗面脱衣室にあったほうが便利なものが、それぞれの家族にあると思います。
これから家を建てようと考えている方は、事前に自分たちに必要なものを吟味し、それらが収納できるだけの収納スペースを確保しましょう。
☆玄関にあると便利なもの
下駄箱が定番ですね。また、数着程度の収納量がほとんどですが、最近はコート掛けなどが付いた既製品も多くあります。
ここで、自分と家族が持っているコートの数を思い出してみてください。こんなにあったのかと思われるでしょう。それらを、どのように管理していますか?いつも着るものは決まっていて、そのほかはタンスなどにしまったままではないでしょうか。結局ムダに衣服を死蔵することになり、モノが増えていく要因になります。
丈の違う衣服を同じクローゼットにしまうのは、結構厄介なものです。家族のコートを全て玄関周りに一元管理するのも、ひとつの方法かもしれません。
そのほか、古新聞・防災用品・非常持ち出し用品・工具類などは意外と置き場所に困るものですが、収納場所が玄関にあると便利だというケースは少なくありません。
それ以外のスペースについても、何がどこにあれば便利なのかを家族で話し合うと良いと思います。
◆収納の常識にとらわれずに
☆納戸やウォークインクローゼットは本当に便利?
ウォークインクローゼットを目玉に掲載しているマンション広告もありますが、ほとんどは充分な収納を確保できないデメリットを隠すためか、デッドスペースの処理方法として使われることが多く、使い勝手を考えてのことではない場合が少なくありません。上記の図のように、“浅く長く”が理想的です。
☆枕棚・天袋は本当に使える?
スペースの活用という点では、天袋を天井裏にしてしまうより収納に活用した方が良いには違いありません。でも、ほとんど死蔵品の収納にしか使われませんし、重いものはしまえません。
上記の図は、天井に直接ハンガーパイプを取り付け、パイプを2段にしたものです。天井高が高いと、踏み台なしにはハンガーをかけられない場合もありますが、季節外のモノをかけておくか、昇降式にすればよく、収納量と使い勝手は格段に良くなります。
軽い衣服は上に、重いものは透明ケースに入れて下に収納し、フルオープンのドアにすれば、どこに何があるかが一目瞭然です。
☆すき間家具は必要?
ちょっとしたすき間を収納スペースとして使うためのラックやボックスなど、さまざまな家具がありますが、「とりあえず」の間に合わせの家具を増やしても、目先の問題を先送りしているに過ぎません。収納家具はできるだけサイズの同じものか、セットで組み合わせられるもの、透明で中身の見えるもの、引き出しやキャスターで出し入れが簡単なものを、先々まで考えて慎重に選ぶことが大切です。
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