
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
収納のコツの2回目は、見せる収納と隠す収納についてです。収納といえば「隠す」面ばかりが注目されがちで、キッチンなども豪華な扉付きのシステムキッチンが人気です。しかし意外にも、リビングなどから見えない部分のキッチンの扉は、日々の作業の邪魔だという話も耳にするものです。
◆なぜ隠すのか?
隠す理由の多くは、衛生面と見栄えを考えてのことでしょう。前回「収納のコツ-1」で、収納は間口を長く…と解説しましたが、廊下にある場合は別として、収納扉そのもののサイズが大きいと、あまり美しくないのが欠点です。1つの部屋に適切な収納扉の分量を考えて、配置することが大切です。
<効率を考える>
キッチンで料理をするとき、主婦はどれだけ収納扉を開け閉めするでしょうか。鍋を取り出したり、器を取り出したり…扉がなければ、相当手間が省けるはずです。
プロの厨房には、扉はほとんどありません。衛生面の配慮が必要なものもありますが、毎日使う調理器具をわざわざ奥に収納する必要はありません。むしろ、扉がなく風通しがよいところにしまったほうが望ましいものもあるはずです。何でも隠すのではなく、適切な収納方法を一旦じっくり考えてみましょう。
<安全・衛生を考える>
阪神・淡路大震災の際、隣の部屋にあったタンスが飛んできたという話を聞きました。居室の中にある収納の場合は、地震の際などに重いものが飛び出さないかどうかの配慮が必要です。家具を建物に固定するか、地震に配慮した金具を付けるなどして扉に安全な工夫をしましょう。
また、収納の中は掃除が行き届きません。掃除しやすくすると共に、収納内の換気などにも配慮が大切です。
◆見せる収納
見せる収納の代表的な例として、本があります。高価な美術本などは扉の中に収納する場合もありますが、そのときも中身がわかるようにガラスの扉が使われます。
なぜ本はオープンな収納が一般的なのでしょうか。数が多く、どこに何があるか常に把握できるようにするため、というのも理由のひとつですが、最大の理由は、本そのものが「見せる価値」を持っているからだと思います。
本は知的好奇心を刺激し、読んだことのある本であれば内容を思い出しますし、まだ読んでいなくても、どのような内容なのか興味がわきます。子供はいつでも大人の本棚が大好きです。
色やサイズがまちまちであっても、本棚は人の視界に入った時に、一瞬の非日常的感覚を呼び起こします。見せる収納は、見せる価値を持っているとともに、この一瞬の非日常を生み出すものが適しているのです。
例えば、同じ布や糸などの裁縫用具の収納を考えてみても、単に修繕のためのものと、趣味のパッチワークの材料では全く異なります。いずれどんな作品にしようかと考えて、材質や色別に仕分けされた布は、十分に見せる収納になりえます。
◆部屋には余白が大切
見せる収納には“余白”がとても大切です。絵画の額のまわりに一定の白い壁が必要なのと同じです。四方の壁一面が本棚という部屋は、本好きにはたまらない魅力がありますが、専用の書斎でもない限り、本棚のボリュームに見合う白い壁があった方が落ち着きます。必ずしも同一壁面に余白がなくてもかまいませんが、ドアや窓などは余白の中に入りませんので注意が必要です。日本の家屋は、窓のサイズが大きいのです。
また、背景がガラスなどの場合でも見せる収納は可能ですが、一般的には壁があった方が無難です。むしろ、余白の量に応じて見せるものの分量が決まります。これから設計するならば、見せたいものの分量に応じて、必要な余白を決めましょう。収納とは、住まい全体の設計の中で考えるべきものなのです。
いろいろ工夫しても、室内にものがあふれてしまうと掃除も行き届かなくなり、心身ともに不健康の元です。思い切って処分するか、そうでなければレンタル倉庫を借りて保管するのも手です。ただその場合には費用が発生しますので、おのずと処分するか保管するかの費用対効果を考えるきっかけにもなります。
見せる収納と隠す収納を使い分けて、快適で非日常も楽しめる収納にチャレンジしてみてください。
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