MODERN Club/不動産よくある質問Q&A

佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。 CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。

『理想のキッチンをつくるコツ-1』 使いやすいキッチンとは[question]

食事は、日々の営みの中でも最も大切なものといっても過言ではありません。健康の維持、子供の健全な育成、家族の団らん…どれも大切なものですが、その中心にあるのが食事だといえます。また主婦にとってキッチンは仕事の場でもあります。特に働く女性が増えている今の時代、キッチンのあり方は、時間を有効に使う上でも重要なポイントです。

今回はキッチンを考えるにあたって大切なことを、2回に分けて考えていきます。
第1回はキッチンの機能面を中心に。第2回はキッチンのさまざまな楽しみ方や、最新のトレンドについてまとめてみましょう。


◆人体のサイズ・動きとキッチン

建築を勉強すると、最初にさまざまな“モジュール”のコーディネーションについて学びます。モジュールとは、建築において設計の基準となる基本寸法のことです。この、モジュールの考え方は、建築を学ぶ上においても、社会に出た後の実践でも、とても重要です。

私も、新入社員時代はトイレの設計を延々とやっていたような記憶があります。実は、トイレの設計は、モジュールの考え方を叩き込むのに最適の場所なのです。それはキッチンも同様ですが、作業が多岐に渡る分、トイレの場合より難しくなります。

モジュールは、人間が扱いやすく作業しやすいように、身長や手を広げたときの長さ、物を持つときの持ちやすいサイズなどから考えられています。規格化することには、さまざまなメリットがあります。住まいに関しても、モジュールのコーディネーションの考え方が多く取り入れられています。

よく知られているのが、広さをあらわす「○畳」という言葉です。畳1枚は人間が横になってキッチリおさまるサイズで、それが基準となって部屋の広さが決められています。1枚の長さは約「1間」で、巾は「半間」となります。建具の高さも以前は1間でした。

最近は日本人でも身長の高い人が増え、1間の高さの建具では頭が当たる場合もありますので、建具の高さも大きく変わりました。日本の住まいは、広さも窓のサイズも和家具も全て、この“1間=6尺”というモジュールを中心に考えられてきたのです。

人体のサイズ・動きとキッチン

特にキッチン周りは、狭い空間にさまざまな器具があり、長時間作業する場です。使う人の身体に見合った設計は、使い勝手、安全面、美しさ、生産効率や価格面などさまざまな方向から重要です。ショールームで自分に合った高さやサイズをチェックして、既成品のシステムキッチンを用いる場合は、そう大きな問題は発生しませんが、自由設計でゼロから設計する場合は、相当な経験が必要です。

キッチンの設計は、経験の少ない設計者が安易に行うと、トラブルの元になるばかりでなく、危険にすらなりかねません。マンションのモデルルームなどでも、「これは危険では?」という配置を目にしたりすることもあります。


◆快適なキッチンとは

<子供の安全>
キッチンには火気、刃物、さまざまな機器類があるため、幼い子供がいる家庭では特に、安全性は重要なポイントです。また、ペットがいる場合も、その習性に応じたチェックが必要です。包丁やさまざまなカッター・電動製品の管理、火気全般の注意、コードや落下物、ヤケドへの注意など、問題点をひとつひとつチェックしましょう。特にオープンキッチンの場合は、いざという時にドアを閉めてロックできる独立型のキッチンとは勝手が違いますから、日々の管理が可能かどうか充分な検討が必要です。

<作業の安全>
子供の安全だけではなく、調理する人間への安全配慮も大切です。そのためには物の整理や使い手が楽に作業できるかどうかが大きく関与します。思わぬ事故を引き起こさないためにも、使いやすいキッチンは大切です。

<火災やガス漏れへの配慮>
ガス漏れ警報器や住宅用火災消火器を用意したり、家庭用の火災警報器(取り付けは義務化されています)を効果的に取り付けたり、安全には万全の配慮をしましょう。熱源はガスより電気のほうが安全とは言えますが、お年寄りなどは、使い慣れたものの方がよい場合もあります。

<衛生面>
食器などをホコリから守れるか、害虫の侵入を防げるか、掃除が簡単かどうかなどもチェックしたいポイントです。キッチン周りのインテリアや雑貨なども、油やホコリで結構汚れますし、掃除がしにくいものです。

<機能性>
上記のような、作業の安全性や使いやすさの考え方は全ての部分に適用されますが、個々人の体格やライフスタイル、考え方などによっても異なります。
機能面を考慮した場合のレイアウトで最も基本的なものが、下記にあげた「L型キッチン」「I型キッチン」です。図を見てわかるように、L型の方が移動距離が短く、効率的で疲れません。わずかな距離だと思うかもしれませんが、1日当たりにすれば、相当の差になりそうです。

快適なキッチンとは

また若い時は気づきませんが、年を重ねると、調理の最中でもちょっと腰掛けたくなります。立っている時との高さの差が少なくなるように配慮した、キャスターつきのキッチン用椅子も発売されています。L型であれば、ほとんど座ったまま作業できそうです。
調理のことだけを考えれば、L型キッチンのメリットは大きいですが、使用可能なスペースの広さや調理から配膳までの動き、食事の取り方などを含めたライフスタイルにも留意しながら検討しましょう。


◆そこにいることが楽しくなるキッチン

多くの機器や収納に囲まれた狭いキッチンは、圧迫感があります。独立型の場合は、家族からの疎外感を感じてしまうこともあるかもしれません。窓をつけたり、対面式にしたり、ちょっとした家事コーナーや趣味のスペースを組み込んだりと、そこにいることが楽しくなる空間であることも大切です。

次回は、キッチンでの楽しさの演出や、ライフスタイルに見合ったプラン、キッチンでの作業をラクにする機器などについて考えてみましょう。

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