
佐藤 章子(さとう あきこ):
ハウステージ有限会社代表。
CFPと一級建築士の資格を生かして住まいと暮らしのコンサルタントとして活躍中。
第1回は、キッチンの機能面を中心に考えてみました。「食」は衣・食・住の中でも特に重要なもので、健康を維持し、毎日の生活を楽しむ上で大切な要素となります。食の大切さを理解せず、菓子パンのような栄養の少ない食事で昼食をすますことに疑問を持たない大人に育ってしまっては、そのまた子供の健康が心配です。
第2回は、キッチンのあり方によるさまざまな暮らしの楽しみ方や、キッチンの最新のトレンドについてまとめてみましょう。
◆暮らしと「食」
住まいづくりの過程で、キッチンをどのように設計するかという話になると、夫は妻へ全権委任してしまって、話に乗ってこない…ということが多いかもしれません。しかしこれからの時代、ますます家族が忙しくなり、大人も子供も自宅で勉強する時間も増えると思われます。以前のように、のんびりテレビを見て団らんする時間も少なくなるかもしれません。
だからこそ、食事の時間がますます重要になり、「食」が家族の中心になっていくのではないかと思います。キッチンは単なる家事の場にとどまらず、団らんの場として、家族といっそう密接なものになっていくでしょう。
下図は、新しい住まいで実現したいことを、自分で整理するためのシートです。夫婦でキッチンを考えるためにも、家族でそれぞれ自分の希望を書き出してみるのもおもしろいと思います。
例えば…
・平日は忙しいので、朝は各自で調理しながら食べられるようにしたい。
・休日は家族全員で、楽しみながら食事を作りたい。
・週末は友人を招待して、パーティなどをやりたい。
など、実現したいことを曜日や時間帯ごとに生活シーンをイメージしながらリストアップします。その横に、そのためにはキッチンやダイニング、リビングをどのようにレイアウトすればよいか、どのような設備が必要かなどを書いていきます。現状の不満点をリストアップして、その横に改善点を書いても良いと思います。
◆キッチンのスタイルと楽しみ方
<独立型キッチン>
戦後、公団住宅を中心にダイニングキッチンというスタイルが普及しました。しかし、キッチンが丸見えになってしまうという不満も多く、「キッチンが散らかっていても、リビングから見えない」という理由で人気になったのが、独立型キッチンです。
日本が豊かになってキッチン専用のスペースが確保できるようになり、豪華なシステムキッチンの登場とともに、キッチンは主婦の憧れのスペースとなりました。壁が多く、シンクまわりのスペースに電子レンジやラックなど、さまざまな機能を組み込むことができ、調理をするという機能重視のタイプです。
<対面式キッチン>
独立式のキッチンのダイニング側をオープンにして、料理をしながら家族との会話を楽しめるキッチンです。独立型のキッチンでは、団らんの時間でも一人でキッチンで洗い物をしなければならないことが多く、疎外感を感じてしまう主婦も多かったようです。対面型キッチンは作業スペース前がオープンになるので、その部分にあった機能が別の場所に移る分、作業動線は長くなります。
<アイランドキッチン>
対面式キッチンがさらに進化した、ダイニングの空間に作業スペースを完全に組み込んだものです。昔のダイニングキッチンと違うのは、作業スペースが壁側になく、周囲を自由に移動できることです。食卓と連続している場合もあります。
このタイプは、ダイニングやリビングの考え方によって、さまざまな楽しみ方の可能性が考えられるのが特徴です。ただし前回も述べたように、キッチンは火を使ったり、刃物類があったりする危険な場所ですので、幼い子供やペットなどへの配慮を充分に考えておく必要があります。
◆キッチンのトレンド
<自由な発想のキッチンづくり>
豪華な扉のシステムキッチンから、大きな扉の中にいろいろなものが収納できるキッチン、扉の開け閉めが不要な、扉のないキッチン、自由な角度のキッチン…など、キッチンに対する理想がより実質的になるとともに、「○○スタイル」といった定型から脱却し、生活スタイルに密接したオリジナルキッチンが生まれていくでしょう。
<キッチンのIT化>
最近は、インターネットが普及して、レシピの検索から食材の通信販売、カロリーや栄養の自動計算などもできるようになり、とても便利になりました。今後も、最新の技術を活用したさまざまな暮らしの変化がありそうです。
◆「食」は暮らしの中心
昔はいろりや火鉢などを中心に家族が集まり、そこに団らんがありました。台所が別の場所にあったとしても、「食」が生活の中心にあったのです。戦後のダイニングキッチンも、当時はリビングのスペースを確保するのは難しく、主寝室兼用の茶の間があるだけで、やはり団らんの中心は「食」だったのではないかと思います。
今は、「食」や料理を楽しみ、そこから新たな暮らしの広がりを作り出していく時代です。キッチンの主要なスタイルの変遷を見てみると、再度「食」中心のあり方が見直され、これからの時代にかなった「食」中心のスタイルが模索されているといえるのではないでしょうか。
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